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天海祐希が“絶対的エース”である理由とは 主演作品を観た時の心地よさはどこから?
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多様性と万能さはオールマイティなトランプのジョーカー以上
天海は今の言葉でいう“絶対的エース”だ。でありながら、自分中心に物事を進めることを嫌い、広く俯瞰的に見て判断していきたい。そんなタイプなのではないか。だから慕われる。天海の主演作品を観た時の心地よさがどこから出るものなのか考えた時、そんな空気感が関係しているのではないか、という答えにたどり着いた。
『老後の資金がありません』のプロデューサー・岡田有正は、大人が見られるコメディ映画にしたいと考えた時、天海の顔が浮かんだという。「日本を代表する国民的スターの天海祐希さんなら、ごく普通の主婦に扮し、お金に悩まされ、立ち向かって行く姿を、美しくコミカルに体現できると思ったから」だと語る。
前田哲監督は天海を「トランプのジョーカー」だという。「どんな設定であろうが、いかなる状況だろうが、ベストに遂行し、アクシデントさえも取り込んでしまう。その多様性と万能さは、オールマイティなトランプのジョーカー以上だ」と。
もはや天海に圧倒的な牽引力などわざわざ言葉で求める必要はないのだろう。絶対的エースとして作品を引っ張っていくのは当然として、お金がらみの笑いを嫌らしくなく作り出せ、難しい設定を調整する術も知っている。プロデューサーも監督も、天海にそれを期待したのだ。
そんな期待についてどう思ったかと聞いても、天海はきっと「脚本が面白い作品にオファーいただいたので出演した」というようなことをシンプルに答えるだけかもしれない。
姑を演じた草笛光子との共演もかなり面白い空気感を作り出していた。きっと良い“現場”だったのだろう。2人の演技が相乗効果となって爆笑できた。
『老後の資金がありません!』 10月30日(土)全国公開 (c) 2021映画「老後の資金がありません!」製作委員会
(関口 裕子)
関口 裕子(せきぐち・ゆうこ)
映画ジャーナリスト。「キネマ旬報」取締役編集長、米エンターテインメントビジネス紙「VARIETY」の日本版「バラエティ・ジャパン」編集長などを歴任。現在はフリーランス。