Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

仕事・人生

連日売り切れのおはぎ専門店 元デザイナーが1年以上も試行錯誤したあんこ作りとは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・出口 夏奈子

夢へのスタート地点はカフェでのイベント出品

季節限定の「黄身かぼちゃ黒米もち」は鮮やかなカボチャあんにあんこ、黒米。森さんがこだわる素材を生かしたおはぎ【写真:Ryousuke Yano】
季節限定の「黄身かぼちゃ黒米もち」は鮮やかなカボチャあんにあんこ、黒米。森さんがこだわる素材を生かしたおはぎ【写真:Ryousuke Yano】

 そんな中、転機が訪れます。森さんはおはぎを作り始めてから、初めて会う人にも「おはぎ屋さんをするのが夢なんです」と話していました。すると「知り合いがカフェをやっているから、そこのイベントでおはぎを出してみたら?」と声をかけられたのです。思いがけず決まった出品。そうと決まれば、目標もおのずと定まります。

「あんこときなこのおはぎだけでは足りない。このイベントに行ってみたい、と思ってもらえるようなもの。食べたことがない、見たこともない、そして食べてみたいと思ってもらえるおはぎを作らなければ」

 思いつく限りたくさんの案を書き出しては、試作品を作る。そんな日々が続きました。そして自分が食べておいしいと思うものを絞り込み、細かい分量を微調整。1年以上かけてようやく完成したのが8種類のおはぎでした。

(写真左から)定番のおはぎの「本醸造みたらし雑穀もち」「ほうじ茶黒米もち」「深煎きなこ雑穀もち」「大納言雑穀もち」【写真:Ryousuke Yano】
(写真左から)定番のおはぎの「本醸造みたらし雑穀もち」「ほうじ茶黒米もち」「深煎きなこ雑穀もち」「大納言雑穀もち」【写真:Ryousuke Yano】

「実は今、うちの定番の中にある『大納言雑穀もち』『深煎きなこ雑穀もち』『本醸造みたらし雑穀もち』『くるみ黒米もち』は、この時に生み出されたおはぎなんです」と森さんはかわいい我が子を思うように語ります。

最大のこだわりポイントは小豆 ブレンドを変えて甘さを炊き分ける

 小ぶりなサイズと雑穀米の使用は、「森のおはぎ」の特長。これは試作品を作る前から決まっていたそうです。

「いろいろな種類を食べたいと欲するのが女性なので、1つしか食べられない大きめのサイズよりも小ぶりの方がいいなと。それに雑穀は食感もそうですけど、食べた時の罪悪感が減るところが女性にとってはうれしいですよね」

すべて一つひとつ手作業で行われるおはぎ作り。写真は「くるみ黒米もち」【写真:Ryousuke Yano】
すべて一つひとつ手作業で行われるおはぎ作り。写真は「くるみ黒米もち」【写真:Ryousuke Yano】

 そんな中で、最大のこだわりポイントは小豆。一般的に、おはぎに使われる小豆ときなこおはぎの中に入れる小豆は同じ1種類の小豆を使用するそうですが、「森のおはぎ」では、その小豆を変えています。

「試行錯誤する中、砂糖を控えた方が小豆本来の香りが生きるという発見があったので、小豆の香りが保てるギリギリの甘さであんこを作りました。でも、それをきなこおはぎの中に入れたら物足りなく感じてしまって。

 というのも、自分のきなこの好みが深煎りだったので、深く煎ってちょっと苦みのあるきなこにしたことで、あんこの甘さが足りなくなってしまったんです。そこで、見た目は同じように見えるのですが、おはぎの外側につけるあんこと、きなこおはぎの中に入れるあんこは小豆のブレンドを変えて、それぞれに合う甘さに炊き分けることで調整しています」

 そうやってこだわり抜いて生み出された「森のおはぎ」。一度食べたら、他のおはぎは食べられないというファンが多いのも納得できます。

「食べた時に素材の味、香りや食感を感じられること。そして見た目のかわいさも大事なんです」と森さん。そのこだわりが人気の秘密なのかもしれません。

◇森百合子(もり・ゆりこ)
美大卒業後、テキスタイルデザイナーとして寝具の柄デザインに従事。その後、染色工場で柄に色を指定する仕事に就いていた際、元々おはぎが好きだったことからおはぎ屋さんの夢を持つ。やがて、イベントへの出品に向けて試行錯誤の末、こだわりが詰まった唯一無二のおはぎを考案。2010年に念願の「森のおはぎ」を出店した。店頭には常時、定番のおはぎ5種類と季節限定のおはぎ3種類が並び、連日早い時間帯で売り切れるほどの人気店に成長。おはぎ職人として勤務する一方、大阪で3店舗を経営する経営者でもある。

(Hint-Pot編集部・出口 夏奈子)