料理・グルメ

エリザベス女王即位70周年を「みそ」でお祝い 宮崎の老舗企業が大抜擢

著者:Hint-Pot編集部・西村 綾乃

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海外の展示会で「みそ」をPRする早川薫さん(右)。来場者は“UMAMI”が詰まったみそに興味津々【写真提供:早川しょうゆみそ株式会社】
海外の展示会で「みそ」をPRする早川薫さん(右)。来場者は“UMAMI”が詰まったみそに興味津々【写真提供:早川しょうゆみそ株式会社】

 スパイスのように振りかけて使える「粉末みそ」を考案した老舗企業「早川しょうゆみそ株式会社」(宮崎県都城市)が、英ロンドンで2022年6月に開催されるエリザベス女王即位70周年を記念した式典に招聘(しょうへい)される。欧州の星付きレストランのシェフからも高い人気を誇る同社の看板商品、みそパウダー「umami・so」が、世界で最も優れた食品の一つと評価されたためだ。英出版社が編集中の即位70周年を記念したアートブックにも掲載されるという。創業136周年を迎えた同社の7代目で、商品を生み出した早川薫さん(32)に開発の経緯などを聞いた。

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みそを粉にしたい 職人からは「できない」と一蹴

 具だくさんのみそ汁や野菜スティックのディップなど、さまざまな味わい方ができる「みそ」。料理のジャンルを問わず、いろいろな場でもっと活用してほしいと願い生まれたのが無添加の生みそを粉末にした「umami・so」だ。

 早川さんは2011年3月に発生した東日本大震災後、体を温めることができ栄養も摂取できる豚汁が被災地の炊き出しで重宝されたことを知った。そして「もっと活用したいけれど、重いみそは運ぶのが大変」と聞き、「使いやすいみそを作ろう」と思案したという。

 しかし、思いを形にできずに4年が経過。2015年、転機が訪れる。早川さんは旅行先で、カレーをテーマにした作品を手がけたことがある映画監督と知り合い、「さまざなまスパイスが絡み合ってできるカレーのように、みそも粉にしてみたら、汎用性が高くなるんじゃない?」とアドバイスを受けたのがきっかけだった。早川さんはその画期的なアイデアを聞き、「『なるほど!』とすぐに着手しました」と振り返る。

 ところが、粉末にするためにはみそに熱を加えなくてはならず、みその風味が落ちてしまう……。斬新と思った提案は、伝統を守る職人たちの常識を覆すものだということが、すぐに判明した。

 職人らからは「そんなものできっこない」と一蹴されたが、「しょうゆパウダーがあるんだから、みそだってできる」と早川さんは諦めることができなかった。そのため、周囲から「好きなことして」と後ろ指を指されないよう、土日を返上し研究を重ねた。

海外料理人のアイデアが刺激に

粉末にしたことで用途が広がった【写真提供:早川しょうゆみそ株式会社】
粉末にしたことで用途が広がった【写真提供:早川しょうゆみそ株式会社】

 早川しょうゆみそ株式会社は、1885年にところてんを生産する商店として設立。戦後にみそやしょうゆを扱うようになった。

 同社で生産するみそは、九州や山口県などで親しまれる「麦みそ」を加工したもの。「ローカル色が強いため、国内だけに目を向けていてはシェアが先細り、受け継いできた文化が廃れてしまう。母の味、ふるさとの味を守らなければ」と発起。2017年から欧州圏でみその販売を始めた。

 欧州圏への進出で、日本では企画段階で一蹴された粉末みその試作品を、海外の料理人たちに試食をしてもらう機会を得た。すると「岩塩のように使えるか」「ヴィーガン向けに提供できるか」「焼いたパンやパスタに振りかけたらどうだろう」など、さまざまな質問や食べ方の提案を受けたという。みそへの固定概念がない料理人からの思いもよらないアイデアに刺激を受け、可能性を感じた。

「試行錯誤を重ね、2019年に試作品の最終形が完成しました。その試作品を、僕が生まれる前からみそ作りをしている70代の職人が『おいしい』と食べてくれた。『ペースト状の生みそと比較しても遜色ない仕上がり』と太鼓判を押され自信になった」と感謝する。

 唯一無二の逸品は、日本よりも先にドイツの展示会でお披露目された。「みそが生まれるまでの工程は文化として興味を持たれ、味は星付きレストランのシェフから『同じ発酵食品のワインやチーズと合う』と高評価を得ました」と胸を張る。