食
畑のキャビアこと「とんぶり」 実は栄養豊富な緑黄色野菜 紅葉する植物との意外な関係
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教えてくれた人:和漢 歩実
「とんぶり」をご存じですか? 直径1~2ミリ程度の小さな緑色の粒で、ぷちぷちとした食感が特徴です。元々は秋田県の珍味でしたが、近年は“畑のキャビア”として話題になり、知る人ぞ知る全国区の食材になりました。現在の生産量は後継者不足などによりピークから減少していますが、旬はこれから。もし手に入ったらぜひ楽しみたい食材です。今が美しい植物との意外な関係や栄養、おいしい食べ方などを栄養士の和漢歩実さんに伺いました。
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とんぶりの正体は? 秋の紅葉でおなじみの一年草「ホウキギ」の実
“畑のキャビア”と呼ばれるとんぶりは、「ホウキギ」と呼ばれる植物の実を加工したものです。乾燥貯蔵しておいた実を茹でてから水に浸して、揉んで外皮を取り除くなどの手間をかけます。古くは中国で「地膚子(チフシ、ジフシ)」と呼ばれ、乾燥させたものを利尿や強壮に効果がある漢方の生薬として扱っていたそうです。
日本では江戸時代に秋田県で食べられるようになったのが始まり。とんぶりという名称の由来には諸説ありますが、「ぶりこ(秋田の県魚ハタハタの卵)に似た、唐伝来のもの」を意味する「とうぶりこ(唐ぶりこ)」が省略されて「とんぶり」に転じたとする秋田の方言説が知られています。
ホウキギは「コキア」という和名を持つヒユ科(旧アカザ科)の一年草。丸くこんもりと茂る姿が特徴的です。とんぶりを食べたことがなくても、コキアなら見たことがあるという人は多いかもしれません。
夏は涼しげなライトグリーンの植物ですが、秋が近づいてくると徐々に紅葉します。秋の深まりとともに真っ赤になり、ふわふわと風に揺れる姿は趣があります。その熟した実を初秋に収穫して、作られるのがとんぶりです。10~11月頃には“新物”が出回ります。