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監督が作った運命的瞬間 ものにした森郁月 『偶然と想像』に見る“一歩踏み出す”大切さ

著者:関口 裕子

『偶然と想像』から「第二話 扉は開けたままで」(c)2021 NEOPA / fictive
『偶然と想像』から「第二話 扉は開けたままで」(c)2021 NEOPA / fictive

 誰においても人生では何度か“運命的瞬間”や“転機”を経験するもの。俳優業なら作品や監督、キャストなどとの出会いも大きな刺激になります。今年の12月27日で33歳を迎える森郁月さんもそんな経験をしたのかもしれません。2003年から地元の大阪でモデルとして活躍し、2008年からは俳優業に進出。そして2021年の今、俳優に“運命的瞬間”を与えることでも注目される監督、濱口竜介氏の最新作『偶然と想像』でさらなる変化を見せたようです。映画ジャーナリストの関口裕子さんに解説していただきました。

 ◇ ◇ ◇

国際的評価が高まる濱口監督 演技ワークショップで与える運命的瞬間

『寝ても覚めても』(2018)がカンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出。続く『ドライブ・マイ・カー』(2021)も同映画祭に正式出品され、脚本賞、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞を受賞し、国際的に注目される濱口竜介監督。

 5時間17分にも及ぶ大作となった2015年の『ハッピーアワー』は、ロカルノ国際映画祭で最優秀女優賞を受賞した。主演は、2013年に兵庫県神戸市で開催された「濱口竜介 即興演技ワークショップ」に参加した、本業を別に持つ30代の女性4人。演技の経験はなかったが、ワークショップで学んだことをベースに、見事その大作を演じ切った。

 主演の一人、川村りらはワークショップに申し込んだきっかけをこう語る。「映画館で観た濱口監督の『親密さ』(2012)に感銘を受けたから」と。俳優になりたいという夢を抱いていたわけではない。でもきっと運命を変える瞬間は誰の人生にもあるのだ。

 2021年3月のベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ)、11月28日には何と三大陸映画祭のグランプリ(金の気球賞)と観客賞の受賞が報じられるなど、濱口監督の国際的評価はますます高まるばかり。しかし、演出及びキャスティングの方法は『親密さ』の頃からほとんど変わらないという。

新進俳優の活躍が目を引く最新作『偶然と想像』

 そんな濱口監督の最新作『偶然と想像』が間もなく公開される。タイトルにもある“偶然と想像”というテーマのもとに作られた3作品からなる短編集。ベテランの俳優も参加しているが、この作品も新進俳優の活躍が目を引く。

 モデルの芽衣子(古川琴音)、親友のヘアメイクのつぐみ(玄理)、そしてつぐみが最近気になっている男性(中島歩)の皮肉なめぐり合わせを描く「第一話 魔法(よりもっと不確か)」。

 高校の同窓会に参加するために仙台を訪れた夏子(占部房子)が、会では会えなかった20年ぶりの友人あや(河井青葉)と街中ですれ違ったことで起きる奇妙なふれあいを描く「第三話 もう一度」。

 それぞれ異なるテイストの物語。惹かれるポイントも千差万別。だが、研究室でスリリングな芝居が展開される「第二話 扉は開けたままで」は、そこで交わされるセリフの見事さも相まって、特に印象深い。芥川賞を受賞した大学教授、瀬川(渋川清彦)の単位を落としたゼミ生の佐々木(甲斐翔真)が、ガールフレンドの奈緒(森郁月)に色仕掛けで迫らせ、美人局的な腹いせをしようとするストーリーだ。

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