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杉咲花の魅力は素直さと心の強さにあり 実力派が揃うシリーズに歓迎された理由とは
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子役出身の俳優にありがちな“処世術”とは一線を画す杉咲の技
杉咲花は2004年から子役として演技を始めた。13歳になった2011年に憧れの俳優、志田未来が所属する事務所のオーディションを受けて合格。とびきりの恥ずかしがり屋であったが、「ドラマに出たい」、要するに「演技をしたい」という気持ちに従う形で俳優になった。
演技者としての杉咲を揺さぶったのはまず、海外の映画祭で非常に評判が良かった松永大司監督『トイレのピエタ』(2015)だった。生と死の狭間で茫洋とする園田(野田洋次郎)、そんな彼を暴力的にこの世につなぎ止める高校生役の杉咲には釘付けになった。
野村萬斎主演の『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』(2016)では、残留思念を読み取る能力を持つ落ちぶれ芸人の仙石(野村萬斎)に、失踪した先輩の捜索を依頼する少女役。次々と明らかになる事件と現在進行形の事件を結ぶ役目を果たす。
中野量太監督の『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)でも、杉咲は宮沢りえが演じる母の命を見守り、ファンタジーへと傾けることも可能なストーリーを現実世界のものとする高校生を演じた(のちに杉咲が出演したドラマ「花のち晴れ~花男 Next Season~」(2018・TBS)で、デートの時に観る映画のタイトルが『湯を沸かせないほどの冷めた愛』だったことにスタッフの愛を感じた)。
年齢的に“家族の中の子ども”を演じることの多かったこの頃。一癖も二癖もある歳の離れた俳優とのコンビで、役における抜群の理解度と演技を見せ、観る者を圧倒する俳優として常に話題になった。
三池崇史監督『無限の住人』(2017)でコンビを組んだ木村拓哉との関係性もまさにそうだ。杉咲のうまさは、子役出身の俳優にありがちな“処世術”に近いものではない。とぎ澄まされた理解力で物語の世界を現実世界へと変換させる力とでも言えばいいのか、ユニークな技を持つ。