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2年半ぶり2度目のブレイク 奈良に「泊まれ」の鹿ポスター 実は“前向きな思い”の結集
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伝えたいことはあるがネガティブなニュアンスではない
こうして“奈良あるある”の日常とメッセージが見事に融合したポスターが誕生。もちろん、制作時からネット受けを狙っていたわけではありません。また、「伝えたいことがストレート」ではありますが、“必死すぎる”というネガティブなニュアンスでもないのだとか。
「自虐的な意味で作ったものではないんです。宿泊をお願いしてはいますが、『ぜひお泊まりください。素敵ですから!』という、あくまでもポジティブなもの。これちょっと重要なポイントかもしれません。また、最初からバスらせる目的でプロモーションすることもないので、このポスターの第2弾は現状で企画していないんです」
都道府県ネタで注目を集めやすい“自虐モード”ですが、奈良はあくまでもその形を取りません。それはなぜなら「奈良を長く愛していただくファン作り」こそが目的だから。繰り返し訪問していただくリピーターを増やすには、一過性の流行を作ることよりもやはり、地元の魅力を的確かつ丁寧に伝えることの方が重要との考えです。
焦りすぎず・飾らず・偽らず ありのままの奈良を伝える試み
この考え、奈良をよくご存じの方なら「分かる!」と膝を打つものがあるのでは? 藤原京から平城京への遷都は710年。それから1300年以上、奈良の地は歴史と文化、それを象徴する神社仏閣などをできる限り守り抜いてきました。多少の開発は当然ありますが、高層ビルが立ち並んだり巨大な繁華街がいくつも出来上がったりといった大きな変化はありません。「変わらない」ことこそが奈良の大きな魅力だといえます。
「ですから我々も、そうした奈良のありのままをお見せするような企画を考えています。今年の冬に打ち出している『佐保路』もその一つ。法華寺から東大寺に向かう道で、美仏『佐保路三観音』で知られる古刹や雰囲気のいいカフェ、雑貨店などが点在するエリアです。確実な安らぎをお約束できます」
東京から夜行バスで一人旅した女性が、境内の縁側に数時間座り、安らぎに浸っている姿を見受けることもあるそう。知る人ぞ知るパワーチャージスポットとして、静かな人気を集めつつあります。
「またJR奈良駅と近鉄奈良駅から乗車し、若草山に上る夜景観賞バスも人気です。広い空と雄大な夕焼け、そして運が良ければシカが入った写真も撮影できますよ。乗客の年齢層は実に幅広く、家族連れや20~30代の女性などもいらっしゃいます」
時折ネットの注目を集めながらも、じっくりとファンを増やしている奈良。焦りすぎず・飾らず・偽らず……といった感じでしょうか。こうした落ち着きの部分には、良い意味で“古都としての揺るぎない誇り”があるようにも感じますね。