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寅さんに釣りバカ…「お正月映画」が目立たなくなった理由とは 映画館が見た変遷

公開日:  /  更新日:

著者:関口 裕子

かつては洋画系と邦画系の名画座だった「シネスイッチ銀座」【写真:関口裕子】
かつては洋画系と邦画系の名画座だった「シネスイッチ銀座」【写真:関口裕子】

 子どもの頃、お正月になると家族で映画を観に行ったという記憶をお持ちの方も多いでしょう。山田洋次監督の『男はつらいよ』シリーズも、50作のうち半分ほどが12月下旬公開のいわゆる「お正月映画」。また、『トラック野郎』シリーズと『釣りバカ日誌』シリーズも一部は年末公開でした。しかし近年は、街中の看板で年末年始ムードを漂わせる作品が不在のような……。お正月映画はなぜ目立たなくなってしまったのでしょうか? 業界関係者によると、そこにはやはりライフスタイルの変化があるようです。かつてお正月に長蛇の列を作っていた銀座の老舗映画館に、熱気にあふれたかつての様子などをお伺いしました。

 ◇ ◇ ◇

「ゴールデンウィーク」は映画業界の宣伝用語だった

 映画の興行用語から広まった「ゴールデンウィーク」という言葉。大映と松竹が競作した『自由學校』を1951年5月5日に同時公開した際、当時、大映の常務取締役だった松山英夫氏が作った宣伝用語なのだそうです。

 獅子文六の原作小説「自由學校」は当時、朝日新聞に連載中。「とんでもハップン」などの流行語を生み出す流行小説でしたが、同じ原作の2作品を同時公開すると観客は二分するのではないかと懸念されていました。

 でも、フタを開けてみると2本とも大ヒット。以降、「ゴールデンウィーク」という言葉は定着し、お正月とお盆に加え、映画会社が興行的成功を託す映画を公開する時期になっていきました。

 映画興行用語には「ゴールデンウィーク」の他にも、「お正月映画」や「夏休み映画」などがあります。そして、今はそんな映画興行が最も盛り上がるはずのお正月ですが……「お正月映画」という言葉、最近目立たなくなっているような気がしませんか?

 そう思って興行や宣伝の方に確認すると、ここ数年は「興行において『お正月映画』という概念はない」というお返事が。お正月映画はどこに行ってしまったのでしょうか? またお正月映画と聞くものの、お正月の映画館の盛り上がりとはどんなものだったのでしょう? そこでお話を伺ったのは、実際にお正月を盛り上げていた映画館「シネスイッチ銀座」(東京都中央区)のマネージャー、吉村俊一さんです。