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寅さんに釣りバカ…「お正月映画」が目立たなくなった理由とは 映画館が見た変遷
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映画興行の関係者が考える「お正月映画の盛り上がりが減った理由」
そんなお正月映画の盛り上がりが減った理由とはいかに? 吉村さんを始めとする映画興行関係者の意見をまとめると、このような理由があるようです。
まず、大型連休を楽しむレジャーが多様化したこと。もちろんシネコンでは大作映画がお客様を待っているわけですが、若い世代を狙った作品がほとんどです。以前のようにファミリーで楽しむ作品をブッキングしないのは、ファミリー層が選ぶレジャーに変化があったからと考えられます。
「シネスイッチ銀座」も「女性に優しい」をコンセプトに掲げてからは、お正月興行に力を入れることはないのだそう。むしろ年末年始や大型連休など家族と過ごす忙しい時間が一段落した時にこそ、ゆったり映画を楽しんでもらえればというスタンスだそうです。
また、おうち時間の定着で利用が急速に伸びた動画配信サービスなども、お正月映画の盛り上がりに影響しているとも言われています。とはいえ、「隣席の方々と泣き笑い合う感覚を共有できるレジャーなんて映画や芝居くらいですので、ぜひそういう感覚を楽しんでいただけるとうれしいです」と吉村さん。大勢で同じ映画を観るという一体感は、やはりかけがえのないものです。
また、映画館を造る際には、全国興行生活衛生同業組合連合会が厳密に定義する換気システムの審査をクリアしなければなりません。どの映画館も安全性にはかなり気が遣われているわけです。
「シネスイッチ銀座」では現在、加賀まりこ主演『梅切らぬバカ』、『ベニスに死す』(1971)でタジオ少年を演じた俳優の50年を追ったドキュメンタリー『世界で一番美しい少年』が大ヒット中。お正月映画で満員だった昔を想像しながら訪れると、時代と文化、街の変遷をしみじみと感じられるでしょう。
(関口 裕子)
関口 裕子(せきぐち・ゆうこ)
映画ジャーナリスト。「キネマ旬報」取締役編集長、米エンターテインメントビジネス紙「VARIETY」の日本版「バラエティ・ジャパン」編集長などを歴任。現在はフリーランス。