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東京パラ銅メダリスト 美馬アンナさんに明かした複雑な思い 競技と勝利のバランス

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 直子

日本国内の車いすラグビー女子選手は4人 男性向け競技との先入観も

アンナ:私はスポーツに関してド素人なので、東京パラに出場するだけでも、メダルを獲るだけでもすごいと思ってしまいます。けれど、選手の皆さんは見ている場所がまったく違う。目指すメダルの色ではなかった悔しさは、テレビを通じても感じるくらいに胸を打つものでした。また、一緒に感動したり悔しくなったり、勇気をもらえた時間になりましたね。倉橋さんにも大きな反響が届きませんでしたか。

倉橋:自分の家族や友人、勤務先には「車いすラグビーは知っているけどしっかり見たことがなく、ルールも分からない」という方も多かったんです。でも、東京パラでは多くの方に見てもらったと感じています。大会が終わって地元に戻った時、友人とプレーについて話ができたり、会社でも「あの時のプレーが……」という話ができたり。自分の身の回りで「あ、そんなに見てくれていたんや」と感じました。後はボランティアの依頼を出した時も、東京パラのおかげで反響が多くあったり、たくさん人が集まってくれたり、今までとは違うなと感じます。

アンナ:パラアスリートの皆さんが、日本中、世界中に大きな勇気を与えてくれた証ですよ。

倉橋:いやぁ、与えられていたんですかね(笑)。

アンナ:本当に与えていたと思います。倉橋さんや皆さんのプレーはもちろんですが、何よりも倉橋さんのその笑顔が印象的ですね。キラキラ輝いていて!

倉橋:実は、東京パラ直後は家に帰ってからも銅メダルという結果を素直に喜べなくて「ふ~ん」と冷めた感じだったんです。でも、皆さんに「おめでとう」と声をかけてもらったり、試合の話をしてもらったりするうちに、やっと結果を受け入れられるようになりました。

アンナ:そうだったんですね。実際に車いすラグビーに挑戦してみたいという声も届きましたか。

倉橋:今所属する「AXE」のメンバーが増えました。私と同じ頸髄損傷の障害があり他競技から車いすラグビーに移ってきた人や、女性も1人増えたと聞きました。

アンナ:以前拝見したインタビューで、倉橋さんが「女性だけのチームでやってみたい」とおっしゃっていたのが、私の心にすごく残っています。実際に女性選手はどのくらいいらっしゃるのですか。

倉橋:今は4人です。

アンナ:4人!

倉橋:すごく少ないんですよ。どうしたら女性が増えるんでしょうね。競技の対象者が「四肢に障害がある人」と限られる上に、女性が車いすラグビーに興味を持って「やろう」と思うにはハードルが高いという現状のようです。

アンナ:確かにタックルの激しさや衝撃を考えると、男性のスポーツというイメージが強くなりますね。だから私も、倉橋さんの姿を見て驚いたので。そうした先入観を持つ方が多いのかもしれません。

倉橋:同じ障害を持っていてスポーツが好きな友人は、東京パラが終わった後に「改めて車いすラグビーをしようとは思わへんわ」と言っていました(笑)。どうにか競技を始めやすい環境作りができればいいなと思います。最初からガチガチにやるのではなく、遊び感覚で楽しくふれあうだけでもいい。プレーの激しさ、競技専用の車いすや練習場所の確保など、課題はいろいろあるかと思います。