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事故で四肢障害も「生きていて良かった」 美馬アンナさんも驚く東京パラ銅メダリストの思考

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 直子

個人競技から団体競技へ 車いすラグビーの仲間から得る生活の知恵

アンナ:他にもいろいろな競技を体験なさったそうですね。

倉橋:兵庫県の自立生活訓練センターで訓練していた時には、水泳や卓球、車いすツインバスケ、陸上などを体験しました。車いすツインバスケは上肢障害がある人でも楽しめるように、ゴールが通常の高さと低い位置(120センチ)に2つ用意されています。

アンナ:いろいろと工夫されているんですね。車いすラグビーもその一環で?

倉橋:はい。最後の最後にまた別の体験をしました。ツインバスケも面白かったんですが、対戦相手にぶつかったらファウルになってしまう。でも、車いすラグビーはぶつかっても怒られない上に、みんな喜んでくれる。そんな軽い気持ちから始めました(笑)。

アンナ:それで東京パラではメダルを獲ってしまうなんてすごいです!

司会:中高生では体操部、大学ではトランポリン部に所属するなど、以前からスポーツが好きで活発なタイプだったようですね。

倉橋:いえいえ、体操もトランポリンも好きでしたが元々怖がりで、技に入るまで時間がかかったり練習をちゃんとしなかったりで、コーチにいつも叱られていました。どちらも個人競技で団体競技とは縁がなかったので、体育でサッカーをしてもまったく動きが分からずにボールに群がるような子どもだったんです。なので、車いすラグビーを始めた時は、動きを理解するまで苦労しました。

アンナ:個人競技から団体競技に変わるのも大変そうです。

倉橋:実はいろいろと助かっています。車いすラグビーをしていると、同じ障害の先輩や仲間がたくさんいて「こういう時はどうしたらいいんですか?」「もっと良い方法はありますか?」と聞けるので、自分1人でいるよりも障害や生活について知ることができています。

アンナ:プレーだけではなく、生活も含めたさまざまな点で助け合っているんですね。

倉橋:お世話になりっぱなしです(笑)。

アンナ:試合ではプレーの激しさが際立ちますが、インタビューでは皆さんがまったく違った本当に穏やかな表情になりますよね。助け合うというお話を聞いて、やっぱり優しいのだろうなと思いました。私も息子を出産し、手がないと気付いてから2年、本当にいろいろな方に支えていただいたおかげで、息子と向き合いながら前を向いて歩んでいます。心の支えや助けの重要性をものすごく感じているところです。

倉橋:私もそう感じることが多いですね。怪我をする前も人に助けられて生きていましたが、車いす生活になり改めて感じる機会が増えました。実は、事故以前は車いすの人を街中で見たことがないと思っていたんです。でも、今になってみると自分も普通に買い物で街中にいくので、絶対にいたはずなんですけど。

 一つ覚えているのは、飲食店でアルバイトをしていた時に車いすのお客さんが来店したこと。当時はどう対応していいのか分からなくて、自分は奥に隠れて他の店員さんに任せてしまったんです。「普通に話しかければ良かった」と今思えるのも、自分が車いすに乗るようになっていろいろ知ることができたから。それは良かったなと思います。