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俳優のんに惹かれる理由とは 監督・脚本・主演作『Ribbon』までの道のりに見える内面

著者:関口 裕子

(c)「Ribbon」フィルムパートナーズ
(c)「Ribbon」フィルムパートナーズ

 少女誌の専属モデルからNHK連続テレビ小説「あまちゃん」(2013年上半期)のヒロインを経て、数々の出演作で映画賞に輝いたのんさん(当時は「能年玲奈」)。2016年7月の改名後も、アニメ映画『この世界の片隅に』への出演や舞台、絵画、音楽などに活動の幅を広げ、監督や脚本家などとして映画作りにも加わっています。そして、プロのスタッフと初めて取り組んだ長編商業映画『Ribbon』がついに公開されました。そこへ向かう過程には、のんさんの人となりや内面を知る手がかりが多く隠されているようです。映画ジャーナリストの関口裕子さんに解説していただきました。

 ◇ ◇ ◇

インタビュー中に顔を凝視してしまった理由

 2013年の連続テレビ小説「あまちゃん」で多くの人々を魅了した「のん」。宮藤官九郎の脚本の面白さや俳優陣のキャラが立った演技、音楽と一つひとつが秀逸だったからなのだが、何より彼女が動く姿を見ているだけで朝から幸せな気持ちになれた。のんの魅力によるところが大きかったように思う。

 当時の日本は2011年の東日本大震災の傷が癒えるどころではなく、笑顔になれる話題に飢えていた。そんな人々の飢餓感を満たしたのがのんなのだと思う。彼女の瞳に宿る光には見る者に意欲を持たせる何かがあり、大抵は誰にインタビューしても動じることなどない私が、彼女の場合はふと気付くと顔を凝視してしまっていた。

 それは美醜ではなく、瞳の力というか? 潤いと光と力を宿した瞳。「天使」とは言いすぎかもしれない。でも彼女の瞳が醸成する空気は、人間が作り出すものではないように思えるのだ。

初監督作は「第二の故郷」岩手で撮影 主演は桃井かおり

 そんなのんではあるが、彼女の創作の原動力は意外なことに「怒り」なのだという。のん初めての劇場用長編監督作『Ribbon』もそんな怒りから生まれた作品だ。昨今、のんは俳優に加え、「創作あーちすと」とも名乗っている。2019年にはそこに映画監督という肩書きも加わった。初監督作は、2019年にYouTube Japan公式チャンネルで公開された『おちをつけなんせ』。

 映画を撮ろうと思ったきっかけは、「何も知らなくても映画を作ることはできる。それを皆さんに見せられたら勇気を持ってもらえるのではないか」ということだった。情熱を持ち、それを実現させるべく行動に移せば、必ずや成し遂げることができると証明したかったのだと思う。

 同作は、ある土地にアーティストが一定期間滞在し、その土地が持つ文化環境を生かした作品作りを行う「アーティスト・イン・レジデンス」の形で行われた。のんが映画制作の場として選んだのは岩手県遠野市。岩手県久慈市が「あまちゃん」のメイン舞台でもあったこともあり、岩手はのんの「第二の故郷」なのだそう。『おちをつけなんせ』では、エキストラや衣裳・小道具制作など多くの場面で遠野市民も協力している。

 初監督とは言うものの、映画を作ること自体は初めてではない。それまでも、脚本を書き、撮影し、編集をして、話している女の子たちをワンシチュエーションで撮った作品を20本ほど制作している。いわゆる習作というやつだ。加えてプロの映画の現場には俳優として参加。映画作りは不案内な世界ではない。

 だが『おちをつけなんせ』は73分の作品。しかも、のん演じる留見の祖母役を桃井かおりに依頼している。自主映画にしては規模とキャスティングが桁外れなものとなった。「何も知らなくても映画を作ることはできる」を掲げたように、当初は、監督、脚本、編集に加え、撮影、衣裳、美術、照明、音楽も全部1人で行おうと考えていたが、先輩俳優たちに失礼があってはと、最初だけプロの手を借りた。

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