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上白石萌歌の人気に加速 『KAPPEI カッペイ』のヒロイン役も話題 “愛される”理由とは

公開日:  /  更新日:

著者:関口 裕子

荒唐無稽な物語 たった一つのリアルに説得力を持たせる萌歌

 そんな萌歌がヒロインを演じる作品に、平野隆監督の『KAPPEI カッペイ』がある。「1999年7の月に人類は滅亡する」というノストラダムスの予言を信じて救世主となるべく、幼い頃から厳しい修行を積んだ「終末の戦士」たちを描く“伝説”のギャグ漫画の映画化。運命の日を過ぎ、能力が必要とされない現代の東京に放たれた終末の戦士たちの、恋や友情、葛藤など遅れてきた青春を描く。

(c)2022 映画『KAPPEI』製作委員会 (c)若杉公徳/白泉社(ヤングアニマルコミックス)
(c)2022 映画『KAPPEI』製作委員会 (c)若杉公徳/白泉社(ヤングアニマルコミックス)

 主人公・勝平を演じるのは、実年齢46歳の伊藤英明。萌歌は、青春(アオハル)からはだいぶ遠のいた初心な勝平が心から思いを寄せる女子大生の山瀬ハル。いわゆる“マドンナ”を演じている。

 勝平や守(大貫勇輔)、英雄(小澤征悦)ら奇天烈な元終末の戦士たちに優しく、今どきの大学生とは思えない素朴な感じで接するハル。高校の時から映画研究会の先輩、堀田(岡崎体育)へのピュアな片思いを続行中。一方、優しくされて舞い上がった勝平や英雄が熱烈にアプローチしてもまったく気づかない奥手っぷりを発揮する。

 ハルのような役に説得力を持たせて演じるのは、実のところ至難の業だ。だが、萌歌はハルを、単なるギャグ映画のお約束=アイコン的マドンナに収めていない。実社会(うきよ)から離れて暮らしてきたマッチョな人々が不覚にも恋してしまうことに、荒唐無稽な物語のたった一つのリアルに説得力を持たせているのだ。

出演する連続ドラマが2本スタート 加速のついた人気ぶり

『KAPPEI カッペイ』を題材に、拳をふり上げてリアルの話をするのはいささか場違いなのかもしれないが。閑話休題。

 萌歌は、萌音とともに高校生の姉妹ピアニストを演じた『羊と鋼の森』(2018)で第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。大人の俳優として演技に向き合う転換点になったと語るドラマ「義母と娘のブルース」シリーズ(2018、2020、2022・TBS系)、「3年A組 -今から皆さんは、人質です-」(2019・日本テレビ系)、大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」(2019・NHK)や、主演した沖田修一監督の『子供はわかってあげない』(2021)でも演技で高い評価を得た。

「第71回カンヌ国際映画祭」でアニメ映画『未来のミライ』の細田守監督と【写真:Getty Images】
「第71回カンヌ国際映画祭」でアニメ映画『未来のミライ』の細田守監督と【写真:Getty Images】

 4月からは、黒島結菜が主演するNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」で妹の比嘉歌子、「金田一少年の事件簿」(日本テレビ系)ではヒロインの七瀬美雪と、萌歌の出演する連続ドラマが2本スタートする。

 この加速のついた人気ぶり! 『子供はわかってあげない』の美波役はオーディションでつかみ取ったそうだ。そんな萌歌との仕事を、沖田監督は「他の何かに気をそぐことなく集中し、作品を宝物のように大事にしてくれた。そこが良かった」と語る。

 実際、萌歌も「美波役のためになるのなら何でもやる」つもりで臨んだという。俳優からそんなふうにリスペクトを示されたら、それはうれしいに決まっている。