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なぜ今『ウエスト・サイド・ストーリー』なのか? 90歳の米大物俳優が再登板した理由

公開日:  /  更新日:

著者:関口 裕子

(c) 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
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 映画やドラマなど過去作品のリメイクは大きな話題を呼ぶ一方、かつてヒットした規模が大きいほど期待と不安も膨らむもの。スティーブン・スピルバーグ監督の最新作『ウエスト・サイド・ストーリー』もそんな作品の代表格でしょう。「一体なぜ今?」という問いに対する答えの1つとして、旧作で重要な役柄を演じた名俳優からのバトンが存在するようです。昨年12月に90歳を迎えたリタ・モレノが、新たな役柄で出演している理由とは。そして、今だからこそ浮き彫りになる作品のテーマとは。映画ジャーナリストの関口裕子さんに解説していただきました。

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シェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」がベースの超名作

 長く住んだ場所を離れ、新たなる地で生活を始める。そうする理由は人それぞれ。でもそれが良い理由にしても、ネガティブな理由にしても、新生活を始めるからにはポジティブでありたい。誰もがそう思うのではないか?

『ウエスト・サイド物語』(1961)でプエルトリコ人のお針子、アニータを演じ強烈な印象を残した、現在90歳のリタ・モレノもまさにそうだという。俳優として生きてきた80年近い時間を、常にポジティブであろうと努力したのだと。

『ウエスト・サイド物語』とは、1957年にブロードウェイで初演されたレナード・バーンスタインとスティーブン・ソンドハイムによる同名のミュージカルを映画化した作品。米ニューヨーク、マンハッタンのウエスト・サイドを舞台に、ハイウェイの建設や再開発によって追われたプエルトリコ人と貧しい白人の若いストリートギャングたちの縄張り争いを描いた。

 物語のベースになっているのはシェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」。悲劇の恋人たちに該当するのは、ポーランド移民の息子トニーと、プエルトリコ自治連邦区から兄を頼ってニューヨークに来たばかりのマリアだ。ポーランド系(ヨーロッパ系)とプエルトリコ系は、それぞれジェッツとシャークスというグループを組んで対立している。トニーはそんなジェッツの創設者。モレノが演じたアニータは、マリアの兄でシャークスのリーダー、ベルナルドの恋人だ。

『ウエスト・サイド物語』は公開当時、バーンスタイン&ソンドハイムの素晴らしい楽曲、現代的でシャープなダンス、米国の縮図ニューヨークが直面していた問題を取り入れた物語で、人々を興奮させ大ヒットした。今では米ミュージカル映画の殿堂入りも果たしている。

 それをスティーブン・スピルバーグ監督が再び映画化すると聞いた時、一体何を目論んでいるのか意図を掴むことができず、いぶかしく思ったのも事実だ。