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エリザベス女王の次男アンドリュー王子 溺愛が生んだ“傲慢” 見えた瞬間は過去にも

公開日:  /  更新日:

著者:森 昌利

2019年にも見えたアンドリュー王子の素顔 世間は“嘘”を一蹴

 女王の即位70周年を迎える記念すべき年に、アンドリュー王子の一件が王室存続の危機を招いているのは、以前から支持者の敬意と王室廃止論者の敵意に挟まれていたロイヤルファミリーの宿命だろう。

 こうしたデリケートな国民感情がある中、王子は2019年11月に行われた英公共放送BBCのインタビューでもその内面をあらわにした。英国中の誰もがまず、王子がインタビューを受けたことに驚いた。しかし王子は敢然とカメラの前に現れ、エミリー・メイトリス記者に対してバージニアさんのことは記憶になく、覚えていないと断言した。

 また2人が会った証拠であり、世界中のメディアが現在も掲載しているツーショット写真についても「覚えがない」と言い張り、「自分の手の位置が不自然だ」などと続けて偽造であることを示唆した。

 さらには、バージニアさんの証言に「ロンドンのナイトクラブで(アンドリュー王子は)汗だくだった」というものがあると聞いて、「それは奇妙だ。あの時期にはフォークランド紛争に参戦した心理的な後遺症が出て、まったく汗がかけない体質だった」と返答。そして、ナイトクラブにいたとされる日は、車で娘のベアトリス王女をピザチェーン店まで迎えに行ったと述べた。

 当然ながら、王子の証言は“明らかな嘘”として世間に一蹴された。インタビューを見たロイヤルファミリーや王室スタッフは、恐らく危機感を覚えただろう。しかし、このインタビューが王子を最悪の事態から救ったともいえる。公共放送のインタビューを“明らかな嘘”で乗り切ろうとした王子が実際の裁判で証言台に立っていれば、一体どんな事態になっていたのだろう。

人間として完璧に近い女王 傲慢さと愚かさが露呈した次男

 無論、この世に完璧な人間などいない。しかし女王は、そんな中でも70年間の長きにわたり英国君主を務め、95歳となった今もロイヤルファミリー内で国民から最大の支持を集める類まれな女性だ。人間としては完璧に近い女王だが、次男の傲慢さと愚かさが露呈するという展開は、完璧な人生は存在しないことの証拠のようで何とも興味深い。

 しかも、チャールズ皇太子の次男であるヘンリー王子も、離婚歴のある年上のメーガン妃と結婚してから“王室引退”の大騒動を起こした。その後の米国生活でも、王室に関する暴露や批判を繰り返している。時代をさかのぼれば女王も、妹のマーガレット王女がさまざまな醜聞を振りまいた。

 愚弟賢兄の物語は日本にも、いや古今東西で無数に存在するが、英国王室のそれはあまりにも典型的であり、普遍的でもある。まさかとは思いたいが、この物語はウイリアム王子夫妻の長男ジョージ王子と次男ルイ王子にも引き継がれてしまうのだろうか。

 ただしこれまでは、アンドリュー王子の誕生前にあった両親の不仲やウイリアム王子とヘンリー王子が10代で直面した母ダイアナ元妃の悲劇など、何らかの事情が存在していた。現在までのジョージ王子とルイ王子は、仲睦まじい父母の愛情を受け、家庭のねじれも経験せず、のびのびと育っているように見える。できればこのまま屈託なく成長し、英王室に続く愚弟賢兄の伝統に終止符を打ってほしいものだ。

 アンドリュー王子の和解話からも、さまざまな顔が見えてきた英国王室。ロイヤルファミリーが織りなす人間くさい栄光と失敗の物語は、今後もきっと世界のファンやウォッチャーを虜にし続けることだろう。

(イギリス・森昌利/Masatoshi Mori)