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サードウェーブコーヒーの波がフランスにも カフェの本場パリで起こる大きな変化

公開日:  /  更新日:

著者:小川 由紀子

ゴシップやお得情報、出会いまでゲット

 私がパリに住み始めた頃の大家であるイゴールおじさんは、私のことを娘のようにかわいがってくれました。そして、よく近所の馴染みのカフェに連れて行ってくれたものです。

 そのカフェはいつ行っても、だいたい見慣れた顔が2、3人はいました。そして、カウンターでエスプレッソやグラスワインをすすりながら、世間で起こっていることやゴシップ話に花を咲かせます。

 中には、「角のカフェのおやじはどこかの国のスパイだから、あそこでは込み入った話はしない方がいい」なんていかがわしげな話題も。このようにローカルのカフェは、都市伝説の発信地でもあるのです。

 さらにカフェは、お得な情報をゲットできる場所でもあります。部屋を探している時に店のマスターへ一声かけておくと、どこかの大家さんが入居者を探している、という情報をくれることも。

 また当時、語学学校に通っていた私は、前述のイゴールおじさんに会話教室を見つけてきてもらったことがあります。その教室は、リタイアしたフランス人がボランティアで開いているもので、カフェでの繋がりから情報を得たようでした。

 誰かに言付けや渡したい物がある時も、マスターや常連さんにお願いをします。カフェは、単にコーヒーやワインを飲むだけでなく、ご近所さんとの交流の場でもあるのです。

 もっとも、自分についてもあれこれ噂されていることはまず間違いないので、ご近所さんとの「濃い」関係をあまり望んでいない場合は、距離を置いた方がいいかもしれません。ただ、空き巣やアパートの水漏れといった災難が日常茶飯事のパリでは、近所に自分のことを知っている人がいるのは安全面でも心強かったりします。

 一人暮らしのお年寄りの中にも毎日行くカフェを決めている人は結構います。そのため、だいたい同じ時間に訪れるその人の姿が見えないと、心配になって常連客が様子を見に行くといったことも。パリのような都会でも、住宅地ではそのような下町気質が残っているのでした。

 そして、カフェは何といっても“出会いの場”です。私のごく身近にも、カフェで知り合って結婚したカップルが3組も! 結婚まではしていなくても、「彼氏が欲しい」という目的でカフェに通う女子はかなりの確率でお相手をゲットしていると聞きます。

 まあフランス人女子に聞くと、昔のように「ちょっといいな、と思ったらドリンクをおごってナンパする」という男性は、最近激減しているらしいですが。