どうぶつ
単身でドイツに渡ったサッカー記者 “猫とともに生きる”暮らしを築いた道のりとは?
公開日: / 更新日:
アニマルシェルターで出会った運命の“彼女”
そんな僕が猫を初めて飼うことになったのは約17年前までさかのぼります。当時、日本でサッカー専門誌の編集記者をしていた僕は、何かのきっかけで動物の保護活動をしているアニマルシェルターのウェブサイトに目を留めました。
そこに掲載されていた猫の写真はもう、それはそれはかわいく、僕はいてもたってもいられなくなってすぐさまメールで問い合わせをしました。そして、翌週にはアニマルシェルターを訪問。その時に出会ったのが1匹の黒猫です。背中の毛が少しだけはげていた“彼女”は同部屋にいた猫たちの一番下でうずくまり、身を震わせながら僕のことを見つめていました。
施設の方によると、「部屋の一番下にいる子は大抵、この中で一番臆病で気が弱い子」とのこと。“彼女”の背中の毛の一部分がないのも、精神的なストレスからくるものだったそう。「この子を飼う際には注意が必要で、簡単には懐かないかもしれない」とも助言されました。
でも、すがるようなまなざしを向ける“彼女”を、僕は放ってはおけませんでした。生涯で最初の猫にめぐり合ったと直感した僕は、さっそく“彼女”を引き取って家に迎え入れることに。これが猫とともに生活をする“意義ある苦労”の始まりとなりました。
施設から自宅まで車で移動する間、ケージの中の“彼女”は鳴き通しでした。家に着いて狭いケージから出してあげると、一目散にカーテンへ走るとその影に隠れてか細い声で鳴き続けています。トイレを設置してごはんとお水を用意してあげても近づかず、まったく姿を見せてくれません。
翌日、翌々日と時間を経ても事態は改善されず、逆に鳴き声がだんだんと大きくなっていきます。夜中も絶え間なく鳴き腫らす中でごはんにも手をつけないものですから、僕も心配になって睡眠不足の日々が続きました。