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カルチャー

育児を“見張る”のではなく“見守る”雰囲気に…女性監督が考える周囲のあるべき形とは

公開日:  /  更新日:

著者:関口 裕子

子育てはキャリアのプラスに 『あした、授業参観いくから。』

 脚本、監督を手がけた新作『あした、授業参観いくから。』も親子の話。「明日、授業参観行くから」「えっ」などという7つのセリフが、5人の生徒の家庭で繰り返されます。会話はまったく同じでも描かれる親子模様はまったく違う、という実験的な短編映画です。

 同じような環境と言葉、会話であっても、人の心持ちや関係性一つでものすごく意味が変わる。演技・脚本ワークショップでよく使っていたそんな親子の会話を映画にしました。片岡礼子さんが教師の役を演じてくださったおかげで、本当にリアルな感じになって良かったなと思います。観た後に「家族、親子」について語り合いたくなるような、優しく見守りたくなるような映画を撮りたかったんです。

『あした、授業参観いくから。』のワンシーン
『あした、授業参観いくから。』のワンシーン

 そもそも私は「家族、親子」に長年強い関心を抱いています。11年前、「安田さんは育児中だから、母親の気持ちが分かりますよね。児童虐待をテーマにしたドラマを一緒に作りませんか」と依頼されて、NHKドラマ「やさしい花」(2011)の脚本を書きました。大阪の2児置き去り死事件を参考にしつつ、いろいろな方に取材を重ねたオリジナル脚本です。

 あの事件の母親は、当時の報道では「鬼畜のような母」という感じで書かれ、刑期も長かったと記憶しています。でも、いろいろヒアリングして分かったんですが、多くの虐待ケースは、我が子を虐待したくてしているわけではない。生活苦や孤立のストレスが溜まって、弱い子どもにぶつけてしまうのです。

 残酷な事件ばかりがクローズアップされるけど、大半は子どもを愛していてもうまくいかず親も困っている、親も救うべきケースです。2児置き去りの母親も、元は子育てに熱心でした。離婚して1人で2児を抱えて、夜の仕事にしか就けなくて、頼れる人もいなくて孤立して、事態が悪化していったのです。