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カルチャー

育児を“見張る”のではなく“見守る”雰囲気に…女性監督が考える周囲のあるべき形とは

公開日:  /  更新日:

著者:関口 裕子

親子・家族の関係性や幸せのあり方などについて思いを馳せてほしい

 子育てと児童虐待は表裏一体。私だって、もしも生活面や精神面で追い詰められていた時に子どもの夜泣きが止まらなかったら、手をあげていたかもしれません。ママ友たちも、紙一重だと言っています。社会全体が「あの家庭は怪しい、虐待するに違いない」と育児を“見張る”のではなくて、「困ってるのかな、何か手伝えないかな」と優しく“見守る”雰囲気になればなと思います。

『あした、授業参観いくから。』のワンシーン
『あした、授業参観いくから。』のワンシーン

『あした、授業参観いくから。』の5人の生徒の家庭の中にも、ちょっとひどい印象の親が登場します。でも、我が子の授業参観に行こうとしているということは、子どもに一応の関心はある。愛情はあるのに、表現が下手だったり、接し方が間違っていたりする。

 うまくいってない親子を見かけた場合、「あの親はけしからん!」と糾弾するだけではなくて、本心はどう思っているのか、どうしたいのか、どうすればうまくいくのか、いろいろ想像することも大事なのではないでしょうか。

 同じクラスにいる生徒でも、それぞれに背負っている家庭の事情は違います。また、同じような会話でも、どう発言するか、どんな状況で伝えるかで、受け止め方は大きく変わります。今回の短編では、親子・家族の関係性や、幸せのあり方、抱える事情などについて、映画の枠を超えて思いを馳せていただけたら……と思います。

『あした、授業参観いくから。』4月16日(土)から新宿K’s cinemaで上映

(関口 裕子)

関口 裕子(せきぐち・ゆうこ)

映画ジャーナリスト。「キネマ旬報」取締役編集長、米エンターテインメントビジネス紙「VARIETY」の日本版「バラエティ・ジャパン」編集長などを歴任。現在はフリーランス。