仕事・人生
80年代「伝説の花組」はなぜ誕生したのか? 元トップ高汐巴さんが語る宝塚の世界
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インタビュアー:竹山 マユミ
3度の組替えで得たトップスターとしての経験 「全員を平等に」
竹山:高汐さんは宝塚在籍中に組替えを3度も経験されていますが、当時はそれをどうとらえていらっしゃいましたか。
高汐:花組で初舞台を踏み、その後、星組、雪組に配属。そして花組で主役をさせていただきました。その間に個性的な先輩方から、多くの事を学ばせていただきました。それぞれ、組の作り方も、主役としてのあり方も違っていたので、大変に勉強になりました。
竹山:そういう状況にすぐに順応できたのですか。
高汐:いえ、やっぱり大変でしたよ。だって、誰かが外から来るということは、元にいる人がそれぞれのポストを取られることですから。スターさんが移動されてその人に役をつけるとなると、元からいる人の役が1つ無くなる。だからやっぱり、最初は風当たりがきついですよね。それが一番しんどかったことかな。宝塚はすごい競争社会なので、その中で揉まれたって感じですね。
竹山:それをどうやって乗り越えていかれたのですか。
高汐:過去のことはあまり記憶にないのですが、ただ女性ばかりの世界なので、やはりいろいろ言われることもありましたが、それでもその中ですべてポジティブに考え、大事なことだけ心の中にとどめて、後は聞き流すという感じでした。そうしたことができるようになったので、割とおおらかに過ごせましたね。
私は何も後ろ盾なく劇団に入ったので、その分、本当に自由に好きなことを好きなようにやらせていただいたというのが正直な話です。いろいろな組に行ったことも、私にとって結果としては良かったんです。だから、全部プラス思考。本当に苦しくてもプラス思考で、全部栄養にしてきました。やっぱり人間って、苦しいことがないと成長できないのでね。
竹山:組替えを複数回経験されたことのメリットを感じましたか。
高汐:いろいろな先輩たちやトップの方を見てきました。そうした中で、下級生も含めて組にいる80人が揃って一つのチームですから、最下級生の子たちにもちゃんと声をかけて平等に接しなきゃいけないと思ったんです。それが結果的に良かったのかな。
その80人のピラミッドが最後、退団前の2年間くらい、花組としてすごくうまく出来上りました。舞台の上で周りの生徒たちがトップの方を向いて迎える時も、振りだけやっているのではなく、ちゃんと気持ちを込めて迎える。それは客席からもはっきりとわかるんですよ。舞台って、心がちゃんと見えるんですよね。