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障害児を育てる母2人 美馬アンナさんと元スキー選手がパラ五輪に受けた影響とは
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俳優やタレントとして活動する美馬アンナさんが障害について深く考えるようになったのは、2019年10月に愛息「ミニっち」を授かってから。生まれてきた我が子が先天性形成不全のため右手首から先がないと知った時の衝撃は、計り知れないものだったとそうです。しかし、将来を悲観した出産から2年半ほどが経った今、美馬家の毎日はとびきり明るい笑顔で彩られています。
障害児を持つ家庭の日常を良いことも悪いことも包み隠さずSNSで発信しながら、障害者と健常者をつなぐ活動をしたいと学びを深めている美馬さん。この対談シリーズでは、さまざまなジャンルの方と障害について語り合っています。
元アルペンスキー日本代表で、ダウン症の長男レンくん(2歳)と先天性心疾患の次男コハクくん(3か月)の母でもある須貝未里さんとの対談も今回が最終回。プロ野球の千葉ロッテマリーンズの美馬学投手、北京五輪スキークロス日本代表の須貝龍選手を配偶者に持つ2人が、「東京パラリンピック(パラ五輪)」のもたらした影響などについて語ります。
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社会の障害に対する理解を後押しした東京パラ五輪
司会:最近では「ダイバーシティ(多様性)」や「インクルージョン(包摂・包容)」という言葉をよく聞きますが、おふたりがこういった言葉を意識し始めたのはいつ頃ですか?
須貝未里さん(以下未里):私は出産前にあまり意識することはありませんでした。ただ、考え始めると難しいものだなと思います。ダイバーシティやインクルージョンは実現していないけど近づいてはいますし、多くの人がそうなりたいと思えている環境ではある。だから、息子たちの成長につれ、社会の受け入れがこれからもっと充実することが楽しみです。
美馬アンナさん(以下アンナ):私が子どもだった頃と比べると、社会として多様な個性を認めようとする流れになっていたり、障害に対する理解も深まっていたりすると思います。何よりも昨年開催された東京パラ五輪の影響は大きかったですよね。
コロナ禍の中での開催はさまざまな意見がありましたが、パラアスリートだけではなく、開会式に登場した義足のモデル・海音(あまね)さんもその後、いろいろなメディアに登場していますし、誰かのきっかけになる大会だったのだろうと思います。
未里:とても大きかったですね。いろいろな障害があっても、何かに対して一生懸命取り組んでいる姿が輝いていて、人の心を動かした。素晴らしい時間だったと思います。スポーツに限らず、子どもたちが何か夢中になれるものを見つけてあげたいと考えるきっかけになりました。
アンナ:私は「息子にスポーツをやらせるとしたら何がいいだろう」と考えたり、五輪にもパラ五輪にも出場できる競技や種目をやれば、健常者と障害者の橋渡しのような役割をできるかも……と夢を抱いたりもしました。本当にいろいろな競技があったので、障害がある本人だけではなく、その家族にも影響を与えた大会でしたね。