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観劇時の“前のめり”はなぜNGマナーなのか 劇場の検証動画が話題 担当者が語る現状
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「九州の劇場として、できる限りのことをしたいと考えました」
「案内係の日報に、『前の席の観客が前のめりになり舞台が見えにくいので注意してほしい』というお客様の声が、毎日のように上がっているのです」と明かすのは、同劇場の宣伝担当者さんです。
「場内アナウンスや開演前のお声がけもしていますが、なかなか改善されないのが現状。劇場側としても長く気にしていたことでしたので、いつか動画を公開しようと考えていました」
現在上演されている舞台『千と千尋の神隠し』は全公演が満席。そのため、同劇場で初めて観劇する観客も多く、前のめりでの観劇がいつもより多くなると予想したそうです。
「恐らく、特にお子様が博多座始まって以来の人数になります。楽しみにしている親子のお客様を失望させることがないよう、このタイミングで動画を制作しました。また、元は2001年公開の映画ですから、ファンの方は20年越しの熱い思いを持って劇場にいらっしゃいます。しかも主演の橋本環奈さんは福岡県、上白石萌音さんは鹿児島県のご出身。九州の劇場として、できる限りのことをしたいと考えました」
出演者も観客も、すべての人たちに楽しく素晴らしい思い出を作ってもらいたい。そんな劇場の思いが詰まった動画は、ツイッター上で大きな反響を呼びました。
「ツイッターのリプライには『知らなかった』『私もそうなっていたかも』という声もありました。動画を制作した意味があったと思う反面、された側の体験談を拝見すると、『こんなにいろんな場所で切実とされている問題だったのか』と胸が痛みましたね。劇場特有の課題かと思っていましたが、スポーツ観戦の場などでも同じようなことが起こっているようです」
確かに、競技場や体育館も来場者が対象を見下ろす構造。とはいえ、鑑賞や観戦に熱中してしまうと……ついつい力が入って姿勢が傾くこともありますよね。
「前のめりをされているお客様はわざとやっているわけではなく、その影響を知っているか知らないかというだけです。お客様一人ひとりが劇場の一体感を作る大切な仲間。あまり細かくマナー警察のようになると、演劇に興味を持ってくれた人が離れてしまうことになりかねません」
その一方で、「演劇をずっと支えてくださっている昔からのファンにも満足してほしい」という思いも。そうしたことから、劇場側もお願いの方法などに知恵を絞っていく考えだそうです。
「私も腰痛持ちなので、2~3時間も背もたれに背中をつけてじっとしているのはとても疲れると、よく分かっています。また、個人的な事情がある方もいらっしゃるでしょう。そのため、どういったお願いの仕方がいいのか、そのバランスはこれからも考えなければいけません」