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吉岡里帆がアニメの新人監督を熱演 『ハケンアニメ!』に見える“守りたい存在”とは

公開日:  /  更新日:

著者:関口 裕子

「守りたい」対象は一体誰なのか?

『ハケンアニメ!』の配給会社である東映は、傘下に東映アニメーションを持つ。それだけに、アニメ制作現場のリアルさや劇中に登場する現実の名作アニメの写真の豊富さは特筆に値する。

 また劇中作品の『運命戦線リデルライト』や『サウンドバック 奏の石』も実際に一部制作されて映画の中に登場する。その2作品が競っていく様子は、実写に合成する形でアニメーション表現される。

(c)2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会
(c)2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会

 この2作品も少年少女たちの物語。そしてやはり誰かが誰かを守る、「守りたい」がキーワードになるだろう話でもある。実際、『サウンドバック 奏の石』の斎藤監督には“魔法をかけたい”対象が明確に存在した。「未来に希望を持たせたい」「守りたい」対象が。それは、作品を作る上で斎藤監督の大きなモチベーションになっているのだろう。

 自分の作品が希望を与えられる可能性があるなら、制作上でどんな苦難があっても世に出さない選択肢はない。子ども時代に『光のヨスガ』に出合えなかった自分のような思いをさせたくないと。

 冒頭で感じた「守りたい」を描くアニメの増加は、もしかすると斎藤監督のように思う若きクリエイターが多いのかもしれない!? 『ハケンアニメ!』を観た後はそんな風にも感じるようになった。

『ハケンアニメ!』5月20日(金)全国ロードショー 配給:東映 (c)2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会

(関口 裕子)

関口 裕子(せきぐち・ゆうこ)

映画ジャーナリスト。「キネマ旬報」取締役編集長、米エンターテインメントビジネス紙「VARIETY」の日本版「バラエティ・ジャパン」編集長などを歴任。現在はフリーランス。