カルチャー
瀬戸内寂聴さんの“走り続けた人生” ドキュメンタリー映画が与える大いなるエネルギー
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自分で自分を鼓舞し、走り続けた姿から感じるエネルギー
そんな晩年の生活で驚いたことがある。それは亡くなる間際まで2つの月刊誌と、新聞コラムを連載していたことだ。介護用ベッドに座り、サイドテーブルで原稿を書く。高さの合わない椅子とテーブルで長時間仕事をするつらさは、コロナ禍で多くの人が味わったこと。こんな風に執筆をしていたとは。
我々はテレビや講演会に出演する華やかな瀬戸内さんしか存じ上げないが、彼女は最後まで自分自身で生計を立てていたのだ。瀬戸内さんは弱みを見せないが、苦しいこともあったと思う。だが、ずっと自分で自分を鼓舞し、走り続けたのだろう。
そんな瀬戸内さんの好物は霜降り肉と、イクラ、ウニ、トロなどの寿司。「肉を食べないと色気がなくなる」と好きなものを食べ、時におしゃれをしてガンガン働く。
その姿を見ているだけで、大いなるエネルギーを分け与えられたような気がした。肉を食べたいという気持ちと同時に。
『瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと』5月27日(金)全国ロードショー公開 配給:KADOKAWA (c)2022「瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと」製作委員会
(関口 裕子)
関口 裕子(せきぐち・ゆうこ)
映画ジャーナリスト。「キネマ旬報」取締役編集長、米エンターテインメントビジネス紙「VARIETY」の日本版「バラエティ・ジャパン」編集長などを歴任。現在はフリーランス。