仕事・人生
YouTubeで話題の“ツナ娘” 20代後半で水産業界に飛び込んだ理由は「父への恩返し」
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マグロを勉強しながら脇口水産の広報活動に勤しむ日々
地元の那智勝浦町に戻った脇口さんは、マグロの勉強をしながらすべての作業を並行して行いました。「マグロは『一匹』ではなく『一本』で数えるのですが、そんなことさえ知らなかったんです」と、当時を振り返った脇口さんは苦笑いを浮かべます。
また、マグロ自体も見たことがなかったため、「現場に行かせてほしい」とお願い。競りに行かせてもらったり、マグロを切ったりしながら、3か月ほどは「ゴリゴリの現場の仕事」を続けました。
マグロの勉強を続けつつ他方で着手したのが、ECサイトでの販促やSNSを使った広報活動です。どうやれば通販で売り上げを伸ばせるか、SNSを利用してどうやって知ってもらうか……試行錯誤しながら行き着いたのはYouTubeでした。
「当時は20代後半。しかも女性ということもあり、水産業界ではなかなか異色のキャラクターだったと思います(笑)。そのためまずは、『こういう人でも水産業界の第一線で活躍できますよ』と知ってもらいたかった思いがありました。必ずしも現場で魚を切ったりしなくても、『例えば私のように広報や人事など現場以外のフィールドでも働けますよ』と。それを知ってもらいたい気持ちがきっかけになって、YouTubeを始めました」
「水産業界ってこんなに素晴らしい」「マグロってこんなにすごい魚」と、文字や言葉でどんなに伝えたとしても、そもそも興味を持ってもらえなければ何も始まらない。それなら「こんな人がいるのか」といったどんなことでもいいので、まずは興味を抱いてもらえれば……そうした意図で、YouTubeを活用することにしたのです。
それが奏功し、現在では多くの人に那智勝浦のマグロを、そして脇口水産を知ってもらうきっかけ作りに成功したのでした。
脇口水産の社長を務める父の長女として、和歌山県那智勝浦町で生まれる。大学進学を機に大阪府に転居し、卒業後も大阪の企業に就職。高いキャリア志向を持ち仕事を続けたが、20代後半の頃にコロナ禍での環境変化を目の当たりにして一念発起。家業を手伝うために退職し、現在は脇口水産の営業部広報課に所属。社長業は長男の兄が継ぐ予定だが、父への恩返しとして兄妹で家業盛り上げに注力。大阪と那智勝浦を往復する2拠点生活を送りつつ、脇口水産や那智勝浦の広報活動に勤しんでいる。
(Hint-Pot編集部・出口 夏奈子)