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仕事・人生

ピーナッツバターがつなぐネパールとの笑顔の輪 日本人女性の挑戦

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 直子

株式会社SANCHAI代表の仲琴舞貴さん【写真:Hint-Pot編集部】
株式会社SANCHAI代表の仲琴舞貴さん【写真:Hint-Pot編集部】

 ピーナッツの芳醇な味わいの奥に、まろやかな塩味とブラウンカルダモンの香りが見え隠れする、おいしいピーナッツバターが話題です。生産国はヒマラヤ山脈を抱くネパール。縁あって現地の女性たちとピーナッツバターを製造・販売するのが、株式会社SANCHAI代表の仲琴舞貴(なか・ことぶき)さん。さまざまな分野で活躍する女性たちにスポットライトを当て、その人生を紐解く連載「私のビハインドストーリー」。コンビニのリサーチ職、IoTサービスを提供するスタートアップ企業などでキャリアを積んだ仲さんが、なぜネパールで起業したのでしょうか。前編では、ネパールと日本の笑顔をつなぐピーナッツバターの誕生物語です。

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新たな寄付の仕組みではなく、寄付に頼らない経済基盤を

「工場で働くネパールの女性たちが『ここで働き始めてから私の人生は生まれ変わった』って言ってくれるんです。それを聞くと、彼女たちを幸せにしたいと思っていたのに、逆に私が幸せにしてもらっているなって」

 ふんわりと穏やかに微笑む仲さんがネパール東部にある小さな村・コタンを訪れたのは、前職でもあるIoTサービスを提供する企業でのプロジェクトがきっかけでした。ネパールの子どもたちと、その子たちが学校に通えるよう寄付する日本の支援者たちが、それぞれの思いに触れられる新たな寄付の仕組みを作るため、現地を視察。寄付の仕組みについて思案するうち、「ここに経済的な基盤ができれば、寄付に頼らず子どもたちを育てられるのでは」と思うようになりました。

 小さな家が点在するコタンでは、働き盛りの男性は海外や都市部へ出稼ぎに向かい、村に残るのは高齢者と子ども、そして女性たち。働き口はほとんどなく、若者は次々と村を離れていく現状を憂う農家の男性の言葉が、仲さんの胸に響きました。

コタンで暮らす人々の様子【写真提供:仲琴舞貴】
コタンで暮らす人々の様子【写真提供:仲琴舞貴】

「『僕たちはコタンに生まれ育ち、ここでの生活が大好きだし、本当に幸せ。ただ悲しいのは、仕事がないから子どもたちはコタンを去り、家族が離れ離れに暮らさなければならないことなんです』という言葉を聞いて、『そうか、必要なのはお金よりも、ここでみんなが生活できる仕事を作ることなんだ』と思いました。彼らにとっての幸せ、それが継続できるという目的を達成するための手段として、工場を作るしかないなと」

 そこで、コタンで広く栽培されながら活用しきれていないピーナッツに注目。ヒマラヤの登山客を狙ったエナジーバーの開発を思いつくも、コタンには電気が通っていないという問題を踏まえ、まずは電気がなくても製造できるピーナッツバターを作ることにしました。