Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

仕事・人生

ピーナッツバターがつなぐネパールとの笑顔の輪 日本人女性の挑戦

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 直子

工場オープン3か月前に届いた朗報「電気が通ったよ!」

 ピーナッツバター工場を建設することになった仲さん。現地の青年をアシスタントとして雇い、工場建設を進めながら、日本に帰国してレシピ作りを始めました。協力を仰いだのは「Soup Stock Tokyo」の商品開発を担っていたフードプランナーの桑折(こおり)敦子さん。友人たちと集まり、まずは電気を使わない道具でピーナッツをペースト状にすりつぶす作業に取り組んでみましたが……。

「ネパールの市場で見つけた大きなミルを日本に持ち帰って、コーヒー豆のように手挽きしたら、詰まって何も出てこない(笑)。仕方ないと、ワインの空き瓶で叩いてつぶしてみたり、すり鉢を使ってみたり、あれやこれやと原始的な作業を黙々と繰り返しながらレシピを開発しました。結構、楽しい経験ではありましたね(笑)」

 一生懸命にピーナッツをすりつぶしても、なかなかなめらかな食感にはならず。試行錯誤を繰り返しながら工場オープンまで3か月と迫ったある日、ネパールにいる現地アシスタントから驚きの知らせが届きました。

「電気が通ったよ!」

 喜びのあまり、思わず出た「嘘でしょ!?」の叫び。電動ミキサーでピーナッツをすりつぶしてみると「何の苦労もなくピーナッツがトロトロのクリーム状になったんです。生まれて初めて、文明の力ってすごいなって実感しました(笑)」。期せずして、当たり前のように電気やガス、清潔な水がある生活を送れる日本は「何ていい国なんだろう」と実感したそうです。

収穫したてのコタンのピーナッツ【写真提供:仲琴舞貴】
収穫したてのコタンのピーナッツ【写真提供:仲琴舞貴】

 工場を作ろうと思い立ってから、2017年1月にオープンするまでの1年2か月は、現地の人々と互いの理解を深める期間でもありました。コタンの人々は、元々明るくて大らかな気質。その一方、自然という不可抗力に生活が左右される場面が多いためか、時間や約束を遵守する習慣はあまりありません。ただ、工場運営には時間や規則を守ることが求められます。

「民族性として片付けるのではなく、彼らが時間や規則を守りたいと思える環境を作ればいいんだと考えました。そこで工場を作る理由、従業員の成長とともに工場を成長させたい思い、いい商品を作るために必要な努力、そのためには時間や決まり事は守る必要があることを村中、一軒一軒訪ねて説明しました。その結果、特に女性たちが興味を持ってくれて、面接には50人以上も来てくれたんです」