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仕事・人生

ネパールでピーナッツバター工場設立した日本人女性 「女性で良かった」と感じた理由とは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 直子

「自分にとっての幸せが何かって、結局自分しか分からないこと」

「写真は真実を写しているように見えるからこそ、そうとは言い切れない側面があることを常に考える必要があると思います。それは写真の中だけではなく、世の中のすべてにおいて言えることで、確実なものなんて実はない。だからこそ表面に見える世界にとらわれるのではなく、自分で判断して価値を選ぶことが大切だと考えるようになりました。その時に重要なのは、自分自身に嘘をつかないことだと思うんです。ホンマさんはそれを写真というフィールドで実践している方だと思います」

 自分の心と向き合い、耳を傾けた結果、少し前まで縁もゆかりもなかったネパールにピーナッツバター工場を建ててしまった仲さん。そのまっすぐでバイタリティあふれる生き方は、ネパールの女性たちに大きな刺激を与えているようです。

「彼女たちに言われたんです。『自分は女性に生まれ、読み書きもできず、家事や育児に専念する人生が変わるとは思っていなかった。でも、こんな山奥に日本からやってきた女性が言葉も分からないまま、工場を建ててしまった。それは自分にとってものすごく大きな驚きだったし、女性でもやろうと思えばできるんだって初めて思えた』って。それを聞いた時、私が女性であることが彼女たちの希望につながったのであれば『女性で良かった』って思いました(笑)」

笑顔輝く現地で働く女性たちと仲さん【写真提供:仲琴舞貴】
笑顔輝く現地で働く女性たちと仲さん【写真提供:仲琴舞貴】

 もし生きづらさを感じることがあったら、自分が本当に面白く思うものは何なのか、大切にしたいことは何なのか、「深掘りしてみるといいと思います」と仲さんはアドバイスします。

「自分にとっての幸せが何かって、結局自分しか分からないこと。変なプライドや理想を外して、ごまかさずに向き合い、理解できた時にたぶん、道って拓かれていくんじゃないかと思います。幸せという価値観は本当に人それぞれ。自分が本当に求める幸せ以外の幸せも求めようとすると、いつまで経っても幸せにはなれないし、たとえ手に入れたところで幸せにはなれないんじゃないでしょうか」

 自分だけのためよりも、周りの人も巻き込みながら、新たな価値を生み出す仕組み作りに面白さを感じる仲さん。「生産者と消費者が互いに幸せを与え合うあり方、今までの消費スタイルの概念とはまったく違う仕組みが生まれたらいいなと思って、妄想だけはどんどん膨らむんですよ(笑)」。この先、仲さんが拓いていく道からも目が離せません。

◇仲琴舞貴(なか・ことぶき)
家業の美容室の経営や、コンビニのリサーチ職などを経て、IoTサービスを提供するスタートアップ企業に転職したことをきっかけに、ネパールの東部に位置する村・コタンを訪問。現地の様子に触れ、一念発起してピーナッツバター工場を建設。現在は株式会社SANCHAI代表として、工場で村の女性たちを雇用し、特産の品種未改良ピーナッツを使ったピーナッツバターを製造・販売している。

(Hint-Pot編集部・佐藤 直子)