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子どもに十分な休みと遊びを ドイツ在住日本人サッカー監督が語る“超回復”理論とは
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学校が夏休みに突入したことで、子どもたちにとってはスポーツをはじめとしたクラブ活動に力を入れる季節がやってきました。ところが、ドイツでサッカー監督として育成年代のチームを指導する中野吉之伴さんは、長期休暇の時期こそしっかりと休む必要性を指摘します。その背景には、子どもの体の成長を促すスポーツ理論があるようです。現地での状況を踏まえ、休みや遊びが子どもたちにもたらす効果について解説していただきました。
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体をより強靭な状態にする「超回復」 適切な休みと栄養補給が必須
前回のコラムでは長期休暇を取ることの意義を中心にまとめてみましたが、今回は休みや遊びがもたらす効果について深掘りしてみたいと思います。
数年前に出席したサッカー指導者のための会議「ドイツ国際コーチ会議」で、ボーフム大学心理学部のミヒャエル・ケルマン教授は、トレーニングによってかかる体への負荷とそこからの回復に関する興味深い講義をしてくれました。その中で、ケルマン教授は休むことの意義をこう説明したのです。
「毎日の生活の中でリラックスできる時間を十分に取ることや、リフレッシュできる趣味を持つことが大切なのは言うまでもありません。年に2度はじっくり体と心と頭をメンテナンスするために、ある程度のまとまった時間を確保することが必要です。そのくらい私たち人間は日常生活の中で疲れを溜め込んでいますから、それをほぐしてあげてください」
スポーツ生理学の基本的な理論の一つに「超回復理論」というものがあります。簡単に説明すると、次の通りです。
私たちの体というのはトレーニングや試合によって負荷がかかると、それに応じてダメージを受けます。つまり、トレーニング前よりも良いパフォーマンスを出せない状態になるわけです。当然ながら体のあちこちに疲労が蓄積すると、100%の力を出せません。
しかし面白いもので、人間の体というのはそうしてダメージを受けた状態で適切な休みと栄養補給を取ると、トレーニング前よりも強靭な状態へと回復するのです。これを専門用語で「超回復」と言います。
超回復された状態で次のトレーニングを行い、ダメージを負った状態からまた回復することでよりパワーアップする。これをバランス良く繰り返していくことで、パフォーマンスレベルを向上させていくことが可能になるのです。