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仕事・人生

ケニアで見つけた自分の個性 就活60社全落ちからアパレルブランド起業の道のり

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 直子

アフリカ布で仕立てた服を通して出会った自分の個性

 自ら「嫁」を名乗り始めたものの、「私=河野理恵」という個人が消えていることに違和感を覚え、「私は何がしたいんだろう? 個としての私は何だろう?」と、自分と向き合う時間が増えたのだそうです。

「日本では『何か違う。私が輝ける方法があるはず』とモヤモヤしながらも仕事して、何となく過ごしていたんです。でも、ケニアでは仕事もせず時間だけはあったので、自分と向き合わざるを得ない環境で『私は何ができるんだろう?』って毎日のように問いかけていました」

 アイデンティティを見失いかけていた河野さんを変えたのは、身近にあるものでした。それは街のあちこちで目にする、原色カラーと独創的なデザインがまぶしいアフリカ布でした。

河野さんを変えたアフリカ布は街にあふれている。ナイロビのカフェのインテリア【写真提供:河野理恵】
河野さんを変えたアフリカ布は街にあふれている。ナイロビのカフェのインテリア【写真提供:河野理恵】

「前からアフリカ布は知っていましたが、派手だし自分には着られないなと。でも自信をなくしていた私の目に入ってくるのは、アフリカ布を身にまとう現地の女性たち。ケニアでは好きな生地を選んで好きな形に仕立てるオーダーメイドの文化なので、みんな自分の洋服を堂々と誇らしげに着るんですよ。その姿がすごくかっこよくて、私もアフリカ布を身に着けたら何かが変わるかも、自信が持てるかもしれないと、初めて洋服を仕立ててみることにしたんです」

 それまでの河野さんは、いつもどこかで周囲の評価を気にしていたのだそうです。大学時代の就活も「バリキャリに憧れて」大企業を中心に60社受けたものの全滅。卒業後は介護の仕事をしたり、通信制大学で教員免許を取ったり、丸の内でOLをしたり、転職を重ねながらも「周りの人に良く思われたい」という価値基準は消えず。「周りが思う正解は何か、その正解探しの旅だったと思います」

 そんな河野さんが誰の目を気にすることもなく、自分が好きだと思ったアフリカ布で、欲しいと思った形に仕立てた洋服。出来上がりを身に着けてみると……。

「初めて自分の個性に出会えた感じがしました。『こんな私でもいける』って思えたのがうれしくて、ちょっと誇らしく上を向いて歩けるようになったんです。なおかつ、ケニアではアフリカ布を着ていると、みんなが『いいね、クールだね』って褒めてくれる。それで自信が生まれました」