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仕事・人生

ケニアで見つけた自分の個性 就活60社全落ちからアパレルブランド起業の道のり

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 直子

「あなたならできるよ」と応援してくれる夫の存在

 自分の個性に出会い、自信が湧いてくると、不思議と進みたい道が見えてきました。

「以前の私のように周りの目を気にしてしまう人たちが、アフリカ布を通して自分らしくなれたり、自分の個性に出会えたり、自信を持って生きるきっかけを掴めたりすればうれしいと思って、『RAHA KENYA』を立ち上げました」

 背中を後押ししたのは「行動しないと何も変わらない」という過去からの学び。そして、自身も新規事業に奮闘しながら、「あなたならできるよ」と応援してくれる夫の存在でした。「面白いもので、そう言われたらできる気持ちになるんですよね」と、パッと咲くような笑顔を浮かべます。

 そこからは「毎日が充実して楽しかったです」と振り返ります。いきなり大きな勝負はせず、まずは自分1人でできる範囲からスタート。街で開かれるマーケットに出かけ、協力してくれる職人を探しました。

「ハンドメイドをする職人さん一人ひとりにサンプルを見せながら、辞書で調べて丸暗記した『Can you make this one?(これ作れますか?)』という英語で話しかけて。初めはガクガク震えるくらい怖かったけど、私の拙い英語を一生懸命聞いてくれるので、徐々に緊張もほぐれました」

縫製担当の職人と河野さん【写真提供:河野理恵】
縫製担当の職人と河野さん【写真提供:河野理恵】

 縫製を任せる職人が見つかり、いよいよ事業として一歩を踏み出すと、まさかのハプニングが続出。職人が納期を守らなかったり、サンプルとまったく違うものを作ってきたり。「ボーダー柄が2本から3本になっていたので『違う』と言ったら、『でも、これもかわいいでしょ?』って(笑)」。文化の違いは百も承知。発注通りの仕上がりになるよう「今でも試行錯誤。『次はどう来る?』とゲームをクリアする感覚ですね」と楽しんでいるそうです。

 2018年の立ち上げから4年。「RAHA KENYA」は多くの女性に愛されるブランドになりました。アフリカ布の仕入れを担当する河野さんは、商品を手に喜ぶお客さんを想像しながら布選びに励みます。

「『RAHA KENYA』のコンセプトは『一歩踏み出すきっかけの』。商品を手にしたお客様にとって前に進むきっかけであったり、背中をそっと押すようなポジティブな力を提供できるブランドになれたらいいなと思います」

 ケニアから日本に届く商品には、そんな応援の思いが込められています。

◇河野理恵(かわの・りえ)
神奈川県生まれ。大学での就職活動では60社に全落ち。卒業後は介護職に就くも1年で離職し、アルバイトをしながら通信制の大学で教員免許を取得。だが、教育実習でその大変さを知り、教職を諦めて不動産会社に就職。2018年2月に夫の起業に合わせてケニアに移住し、同年12月にアフリカ布を使ったアパレルブランド「RAHA KENYA(ラハケニア)」を立ち上げた。2020年に1児の母となり、子育てにも励む。

(Hint-Pot編集部・佐藤 直子)