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元宝塚娘役トップ月影瞳さんが「完璧な方」と語る レジェンド轟 悠さんの“本当の”優しさ

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・瀬谷 宏

インタビュアー:竹山 マユミ

娘役として過ごした宝塚時代を語った月影瞳さん【写真:荒川祐史】
娘役として過ごした宝塚時代を語った月影瞳さん【写真:荒川祐史】

 男役で1人、娘役で4人のトップスターが誕生し、宝塚歌劇団史上でも粒揃いといわれた76期生。その中で星組と雪組で娘役トップスターを歴任した月影瞳さんは、早くから大きく注目された存在でした。宝塚の世界をOGたちの視点からクローズアップする「Spirit of タカラヅカ」、月影瞳さんインタビューの第2回はトップ娘役に就任してから歴史的な組替えの際の苦労、そして男役のレジェンドともいわれる轟 悠(とどろき・ゆう)さんとの思い出などについて。聞き手はフリーアナウンサーの竹山マユミさんです。

 ◇ ◇ ◇

心がけていたのは素の自分を出すのではなく「娘役」を作ること

竹山マユミ(以下竹山):月影さんは1990年の宝塚入団以降、大きく注目されていましたね。大きな役をいただくことはどんなお気持ちだったのでしょうか。

月影瞳さん(以下月影):ありがたいことに、宝塚の新人公演で大きな役に抜擢していただきました。研1(宝塚入団1年目)の終わりぐらいからでした。素敵な男役の方々と組ませていただいたと思っています。

 でも、とにかく責任の重さを感じている状況でした。その中で心がけていたのは、娘役としてのあり方です。男役さんの隣で、(自分が)前に出すぎてはいけないし、かといって引きすぎてもいけない。その中でも一定の存在感がなければいけない……そんなバランスをとても心がけていました。毎日私なりに研究していたのを覚えています。

竹山:その微妙な部分を解釈するのは大変だったのではないですか。

月影:やはりそこは、宝塚の素晴らしい上級生の方々を見て勉強させていただきました。男役の方は、「宝塚の男役」を日々研究し、時間をかけて作り上げていきます。ですから、娘役も同じように「宝塚の娘役」というものを作らないとバランスは築けないと思っていました。宝塚の娘役は“女優”とは少し違うのではないかと考えていて、宝塚の世界に合った娘役という役作りが必要だと思っていました。先輩方の演技を見て、たくさん悩みながら役作りをしたことを覚えています。

竹山:同期の中でも娘役さんは抜擢が早いですし、トップになられるのも早いですよね。だから、早く何か身につけなくては、早く作り上げなくては……という思いがあったのではないかと思うのですが。

月影:そうですね。ただ、そういうものは上級生から受け継がれてくるので、自然と身についていたというのはあります。

竹山:目標やお手本にしていた方はいらっしゃいますか。

月影:たくさんおられます。私がいた頃も、娘役さんは本当に個性豊かなさまざまな方がいらっしゃいました。だからその都度、その方たちについて勉強させていただきました。非常に優しく、愛のあるご指導をいただきました。

竹山:皆さん、娘役というのがどういうものなのかをそれぞれが貫いていらっしゃるから、それを伝統として受け継がせてあげたい……そんな愛情が熱意のある指導につながっているという感じなのでしょうか。

月影:そう思います。やはり、人に熱意をもって指導することはとてもエネルギーを使うことだと思います。そんな熱意をもって人に教えていただけるというのは、とてもありがたいことだったと思います。たまには失敗して落ち込むことはありましたが、今ではそのおかげでたくさん学ぶことができたと思っています。

竹山:ドレスの着こなし一つとっても、かなり大変だったと思います。どうやったら裾がきれいに上がるかとか、細部にわたってとても研究されたのでしょうか。

月影:やはり、下級生の頃から髪型、アクセサリーから、ドレスさばき、娘役としての姿勢など、上級生には多くのことを教えていただきました。また、同期にも見てもらい、日々研究していました。

竹山:あの大きな輪っかのドレスを着ながら大階段を下りるというのは恐ろしくないのですか。

月影:やはり、怖いと思いながら階段を下りていました。でも、やっていくうちにその怖さに少しずつ慣れてきました。下を見ない方が怖くなかったようなことは何となく覚えていますが、「今やってみて」と言われたら、怖くて絶対に無理だと思います(笑)。