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仕事・人生

元宝塚娘役トップ月影瞳さんが「完璧な方」と語る レジェンド轟 悠さんの“本当の”優しさ

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・瀬谷 宏

インタビュアー:竹山 マユミ

轟 悠さんは「自分に厳しく、男役の美学を貫いた方」

笑顔が素敵な月影さん【写真:荒川祐史】
笑顔が素敵な月影さん【写真:荒川祐史】

竹山:とはいえ、当時の雪組男役トップスターだった轟さんとはしっかりとお話をされたことがない状況だったわけですよね。どうやってご関係を築かれたのですか。

月影:轟さんは、とにかく舞台作りにストイックな方でした。自分に厳しい方でしたので、私自身も言い訳ができない。だから、自分を完璧にしなきゃいけないという思いでやっていました。実際は、「思い」だけが空回りしていましたが(笑)。

 仕事にはストイックに向き合い、集中していましたが、舞台を離れると非常に優しい方で、稽古場を離れると仕事の話はまったくせずに冗談ばかり言い合っていました。私にとっては、そのような冗談を言う時間もとても楽しくて貴重なものでした。

竹山:轟さんは本当にトップ・オブ・トップのレジェンドとして長くご活躍されていましたね。月影さんがご卒業されてからの関係性というのはどんな感じなのですか。

月影:轟さんが出演されていた舞台は必ず毎回観劇させていただきました。以前は終演後楽屋に行くと、話が弾んで時間を忘れ、雪組時代の話を思い出しながら、笑い合っていました。

竹山:ご卒業されたら2人で一緒に舞台を観劇されたり、ごはんを食べたりというトップコンビをよくお見かけしますが、そういうことはないのですか?

月影:連絡はよく取り合いますし最近も連絡をしましたが、私たち2人の関係性は少し珍しいかもしれませんが、プライベートで会ったり、一緒に観劇したりすることはありませんでした。こういうトップコンビってなかなかいないみたいですね。

竹山:会いましょうとか、そういう空気にはならないのですか。

月影:これは、元々ある、轟さんの舞台作りに対するトップコンビの考え方、ポリシーからきていると思います。私が宝塚在籍時代、プライベートでいろいろご一緒してしまうと、舞台で共演した時に新鮮さが失われたり、プライベートの馴れ合いみたいなものが出てしまうことを気にしていたように思います。舞台を作り上げる上で、トップコンビとして変な気遣いをさせないように、轟さんはあえて現場で勝負という風にしてくれていたような気がします。舞台作りを完璧にしたいというストイックな轟さんならではの優しさだと思っていますし、男役の美学を貫いた方でした。そのような関係性が自然と今でも続いている感じです。

竹山:今でもおふたりならではの宝塚時代の関係性が続いているということですね。

月影:ですから、私は今でもとても尊敬していますし、恐らく轟さんも私のことを“放っておけない妹”くらいに思ってくださっているのではないでしょうか。もちろん連絡はしていますが、私はこの関係がすごく良いと思っています。現役当時の関係性が今も続いている感じです。この関係であるからこそ、私の中では今でも轟さんが宝塚に存在しているかのように想像ができています。

 私は先に卒業して、轟さんが専科で現役を続け、理事もされ、舞台上で共演したくてもできない関係が長く続き、離れ離れであったので、常に寂しさを感じていました。その時間が長かったからこその気持ちの持ち方もありますし、他のトップコンビとはかなり関係性が違うのだと思います。

竹山:本当に特別なご関係ですね。轟さんにとっても、やはり月影さんじゃなかったら……というのがおありになったかもしれませんね。

月影:轟さんは昨年退団されたのですが、その後、私にとっては驚きというかちょっとうれしくなるようなことがあったのです。

<次回に続く>

◇月影瞳(つきかげ・ひとみ)
長野県上田市出身。1990年、宝塚歌劇団入団(76期)。愛称は「グン」。花組公演「ベルサイユのばら」で初舞台を踏み、1991年に花組配属。1992年に安寿ミラ・森奈みはるのトップコンビお披露目公演だった「スパルタカス」で、新人公演の初ヒロインに抜擢される。1994年に星組へ組替え。1997年「誠の群像/魅惑II」で麻路さきの相手役として星組トップ娘役就任。同年に雪組へ組替えとなり、轟 悠の相手役としてトップ娘役に。サヨナラ公演は2002年の「愛燃える/Rose Garden」。退団後は舞台「るろうに剣心」や「母の法廷」などに出演。多数の個性的な役で幅広い年齢層を演じ、注目を集める一方、上田市観光大使・上田映劇理事の他、豊島区アート・カルチャー特命大使も務める。ピラティスインストラクター資格保有者。3年間の台湾在住経験から中国語も堪能。

◇公演情報
舞台「追憶のアリラン」
【日時】8月18日(木)・19日(金)午後6時30分、20日(土)午後2時/6時30分、21日(日)午後2時、26日(金)午後2時/6時30分
【会場】東京芸術劇場シアターウエスト
【金額】前売り4500円、U25(25歳以下)3800円、高校生以下1000円
【販売窓口】東京芸術劇場ボックスオフィス窓口(休日除く午前10時~午後7時)、チケットぴあ、Confetti(カンフェティ)(平日午前10時~午後6時)


「文化財de文化祭in安楽寺『月影瞳ライブ~朗読と名曲のひととき~』」
1部・朗読「杜子春」(作:芥川龍之介)/2部・ライブコンサート
【日時】2022年10月9日(土)午後2時/5時
【会場】安楽寺(長野県上田市別所温泉2361)
【金額】一般2500円、U-22(22歳以下)1500円
【出演】月影瞳(演奏:秋山桂一郎)
【構成・演出】石井幸一(鎌ヶ谷アルトギルド)
【企画制作】一般社団法人シアター&アーツうえだ
【主催】文化財de文化祭実行委員会
【問い合わせ】文化財de文化祭実行委員会事務局(上田市教育委員会生涯学習・文化財課内)0268-23-6362 詳細は上田市ウェブサイト

(Hint-Pot編集部・瀬谷 宏)

(インタビュアー:竹山 マユミ)

竹山 マユミ(たけやま・まゆみ)

明治大学卒業。広島テレビ放送のアナウンサーを経てフリーアナ、DJとして各テレビ局やラジオ局で番組を担当。コーピングインスティテュート コーピング認定コーチ。宝塚歌劇団は生まれる前から観劇するほどの大ファン。