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コンプレックスを武器に 身長180センチの元宝塚・悠未ひろさんを変えた「信じる力」

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・瀬谷 宏

インタビュアー:竹山 マユミ

無謀な追っかけにも優しく対応してくれた真矢ミキさん

立ち姿が素敵な悠未さん【写真:荒川祐史】
立ち姿が素敵な悠未さん【写真:荒川祐史】

竹山:その頃はどなたのファンだったのですか。

悠未:真矢みき(67期、元花組男役トップスター。退団後の2015年からは「真矢ミキ」に)さんです。最初に観た「ベルばら」の後、真矢さんが男役の3番手だった花組の公演で大ファンになってしまって。その時は大浦みずき(60期、元花組男役トップスター)さんの退団公演で、ちょっとしたエピソードがありました。

竹山:どのようなお話ですか。

悠未:私はファンクラブに入っていなかったのですが、学校が終わったら制服のまま、よく日比谷(の東京宝塚劇場)に行っていました。同じ空気を吸っていたいという気持ちで。その公演終わりの出待ちの時間にちょうど行けたので、「みきさんお疲れさま」と書いた画用紙をカバンの中に潜ませて、みきさんが出てこられたらファンクラブの方がガードしている後ろで見せていたんです。

 でもすごい人だかりだから見てもらえない。これはもう行くしかないと思って、ガードをすり抜けて路地の方に追いかけていったんです。もちろんファンクラブの方には止められましたけど、それも振り切り、路地で止まっていたみきさんの車を見つけました。そこで画用紙を見せたら、みきさんが窓を開けて「ありがとう」と言ってくださったのです。「ありがとうね、追いかけてくれて」と。私は一生この人についていきたい、この方のようになりたいと心に秘めた出来事でした。

竹山:これが「清く正しく美しく」の所以ですね。舞台に出ていらっしゃる時も、そうではない時も、皆さんに対する感謝の気持ちと、夢を壊さないでいてくださる姿勢が本当に素敵です。

悠未:本当にみきさんはお優しかったです。だって、本当ならルール違反ですよ。追いかけていくなんて。ファンクラブに入っていてもそんな近くで話せないのに、追いかけていったあの制服の子が……みたいな。そこでますます一緒の舞台に立ちたい、みきさんのいらっしゃる舞台に私も立ちたいという情熱が燃えたぎりました。

竹山:入団なさってから真矢さんとお話しされる機会はありましたか。

悠未:ありました。研1(入団1年目)の時に。本当はトップの方に話しかけるなんて恐れ多くてできないことなんです。しかも、私は雪組初舞台生でしたから、他組で関わりもなく、しかもお稽古場などではない場所でした。ですが、今を逃したらもう話しかけられないと思ったから、話しかけてしまったんですよ。

竹山:真矢さんはおひとりだったのですか。

悠未:たぶん取材のお仕事のために待っていらっしゃる状況で、おひとりでした。今だと思って「私、真矢みきさんの大ファンで、追いかけてここまで来ました。宝塚に入団できました」みたいな話をしました。そうしたら、「そうなんだ。頑張ってね」って。私の熱烈な思いが伝わり(笑)、今もみきさんとは交流させていただいていて、その時の話もしたりします。覚えてらっしゃらないかもしれませんが、「熱い思いをありがとうね」って、いつも微笑んでくださいます。

竹山:どれだけ素晴らしい方でも、同じプロセスを踏んでいるので、お気持ちを分かってくださるのかもしれませんね。そんな経験をされたら、“悠未さんがいる宝塚”に憧れて入ってこられた方にも同じように接していらっしゃるのではないですか。

悠未:私も3回目でやっと合格しましたし、受験生の気持ちは痛いほど分かるので頑張ってほしいです。たとえ合格という道ではなかったとしても、私が父に反対されて、受験できなかったかもしれないことを思うと、やはりチャレンジしていただきたいです。今になって思うのは、チャレンジできるならその過程が一番大切だと、すごく感じるのです。

竹山:情熱が続き、その夢を叶えられるという世界があるのなら、やはり信じた方がいいですよね。

悠未:直感や自分がやりたいと思った気持ちは、閉じ込めない方がいいですよね。だって、本当に何がどうなるか分かりませんから。私にしても、宝塚に出会わなければ無口で小さく背中を丸めたままだったかもしれませんし。

竹山:悠未さんはとても背が高いので、音楽学校時代はいろいろなことで目立ってしまったのではないですか。

悠未:そうですね、予科時代は特に、目に留まりたくない時に目立ってしまっていました。だから、予科生らしく見えるようにいろいろ研究もしました。でも不思議と“つらさ”は感じなかったんですよ。

<次回に続く>

◇悠未ひろ(ゆうみ・ひろ)
東京都出身、11月5日生まれ。愛称は「トモ」。1997年に83期生として宝塚歌劇団に入団し、雪組公演「仮面のロマネスク/ゴールデンデイズ」で初舞台。宙組配属後は、2003年に「傭兵ピエール」、「白昼の稲妻」で2作続けて新人公演の主演に抜擢される。05年に「Le Petit Jardin -幸せの庭-」で宝塚バウホール(宝塚大劇場に隣接する小劇場)初主演。08年に「宝塚巴里祭2008」(ディナーショー形式のショー)主演。13年に「逆転裁判3-検事マイルズ・エッジワース」主演。同年12月「風と共に去りぬ」(アシュレ/ルネ役=役替わり)で、最後の83期生として宝塚歌劇団を退団。退団後は14年CM HONDA「Nシリーズ就職篇」歌唱、GACKT主演舞台「MOONSAGA-義経秘伝-第二章」(平教経役)に出演。「ライブ・スペクタクル『NARUTO-ナルト-』」では大蛇丸役を国内、海外公演で続投している。舞台「私のホストちゃんREBORN~絶唱!大阪ミナミ編~」(松風ちひろ役)、朗読劇やミュージカル「Living Room MUSICAL」、自身のライブなどでも精力的に活動。

○出演情報
HIRO YUUMI 25th ANNIVERSARY Special Talk&Sing『COLLECTION!』
悠未ひろ 25thアニバーサリー コンサート
【日時&ゲスト】11月3日(木・祝)午後5時30分 ゲスト:小柳ゆき(歌手)、4日(金)午後7時 ゲスト:伶美うらら(95期、元宙組娘役)、5日(土)午後1時30分 ゲスト:七帆ひかる(85期、元宙組男役)/午後5時30分 ゲスト:十輝いりす(85期、元宙組&星組男役)、6日(日)午後1時30分 ゲスト:すみれ乃麗(92期、元宙組娘役)/午後5時30分 ゲスト:なし(FC会員限定公演)
【伴奏】向江陽子(pf.)
【会場】霞町音楽堂(東京都港区)
【金額】9500円(全席指定、日替わりビジュアルプログラム・お土産付き)
【一般発売】10月7日午前10時(カンフィティ独占発売

(Hint-Pot編集部・瀬谷 宏)

(インタビュアー:竹山 マユミ)

竹山 マユミ(たけやま・まゆみ)

明治大学卒業。広島テレビ放送のアナウンサーを経てフリーアナ、DJとして各テレビ局やラジオ局で番組を担当。コーピングインスティテュート コーピング認定コーチ。宝塚歌劇団は生まれる前から観劇するほどの大ファン。