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“有言実行”で主役掴んだ元宝塚宙組男役・悠未ひろさん 衝撃の大失敗で受けた“愛のムチ”

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・瀬谷 宏

インタビュアー:竹山 マユミ

歌が得意なのに…大事な舞台でのまさかの大失敗

傘を差す姿も絵になる悠未ひろさん【写真:荒川祐史】
傘を差す姿も絵になる悠未ひろさん【写真:荒川祐史】

竹山:当時、いろいろなことを考え、実践されていたのですね。配属になった宙組はどんな組でしたか。

悠未:当時の宙組はできたばかりで、私が下級生の時は他の組に比べて決まっていないことが多く、そういう意味では大変でした。規則などのベースがないから、問題が起こると規則を見直さなければならないという感じです。決まり事がなかった分、自由といわれていたのですが、自由は逆にすごく難しいことでした。

 宙組は他の組とは違う目で見られていた部分もあり、またやはり新しい組の発足は一大イベントなので、ちょっと特別感があったのです。宙組誕生のお披露目だった1998年の元日に、組子(組に在籍する生徒)が一人ひとり名前を呼んでもらえることがあって、すごくうらやましがられました。また、歴史がない分、他の4組とは違う組という感じがあったので「宙組は宙組で楽しく頑張ろう」みたいな団結感がありましたね。

竹山:一番つらかったのはどんな時でしたか。

悠未:つらかったというより、乗り越えて良かったという出来事があります。新人公演で最初に歌のある役がつき、次に2番手さんの役がついた時に、その歌を宝塚大劇場の本番で意気揚々と歌ったら声がひっくり返ってしまったんです。私が新人公演の主役をやりたいと言っていた時の上級生が客席で見ていて、「あなた、自分で歌がうまいと思っているようだけど、うまくないよ」と言われてしまいました。

 その言葉は上級生の“愛のムチ”だったのですが、深く傷付いて……。歌の成績もまあ良かったし、自信もあったけど、あんな失敗したら歌が得意な人なんて思ってもらえるわけないと。

竹山:そこからどうやって立て直したのですか。

悠未:自分の中で歌が得意という概念を外し、一から歌をやり直してレッスンに励みました。一度どん底まで落ちて這い上がりジャンプしたという、最初の経験でしたね。

竹山:結果的に、上級生からの言葉は大変ありがたいものでしたね。

悠未:本当にそう思います。あの時は悲しくて「ひどいこと言うわ」と思ったのですが、それを言ってくれる人ってなかなかいないから、ありがたかったですね。

竹山:先輩もきっとそういうご経験がおありだったのかもしれないですね。でも、新人公演は宝塚大劇場と東京宝塚劇場で1回ずつしか上演されないので、その時に限って失敗してしまったというのはつらかったですね。

悠未:大劇場で大失敗して、東京公演でも声がひっくり返ったところがやはり怖くて、トラウマみたいになりました。そこのパートになるとうまくできない。自信を持ってできるようにならなくて、落ち込みました。

竹山:でもその出来事があったからこそ、さらに歌を深めていかれたのでしょうね。

悠未:もしかしたら、「歌はうまくないよ」という言葉がなかったら、何となくそつなくやり過ごしてきてしまったかもしれません。恥をかいたことが、すごく大切な経験になっていると思います。私が若い人にいろいろアドバイスする機会があると必ず言っているのは、「失敗は本当にした方がいい。成功して得るものより、失敗して得るものの方がすごく大きいから」ということですね。

竹山:深い言葉ですね。悠未さんは立ち姿が素敵だから宝塚の中で目立つ役も多かったですよね。いろいろなキャリアを重ねられた中、ご卒業はどういうタイミングで決められたのですか。

悠未:宝塚が大好きすぎて、卒業はあまり私の中にはありませんでした。ここにいられるものならずっといたいと。そんな中で出会った役が、卒業を考える一つのきっかけになったのです。

<次回に続く>

※11日15時35分に記事の一部を修正しました。訂正してお詫びします。

◇悠未ひろ(ゆうみ・ひろ)
東京都出身、11月5日生まれ。愛称は「トモ」。1997年に83期生として宝塚歌劇団に入団し、雪組公演「仮面のロマネスク/ゴールデンデイズ」で初舞台。宙組配属後は、2003年に「傭兵ピエール」、「白昼の稲妻」で2作続けて新人公演の主演に抜擢される。05年に「Le Petit Jardin -幸せの庭-」で宝塚バウホール(宝塚大劇場に隣接する小劇場)初主演。08年に「宝塚巴里祭2008」(ディナーショー形式のショー)主演。13年に「逆転裁判3-検事マイルズ・エッジワース」主演。同年12月「風と共に去りぬ」(アシュレ/ルネ役=役替わり)で、最後の83期生として宝塚歌劇団を退団。退団後は14年CM HONDA「Nシリーズ就職篇」歌唱、GACKT主演舞台「MOONSAGA-義経秘伝-第二章」(平教経役)に出演。「ライブ・スペクタクル『NARUTO-ナルト-』」では大蛇丸役を国内、海外公演で続投している。舞台「私のホストちゃんREBORN~絶唱!大阪ミナミ編~」(松風ちひろ役)、朗読劇やミュージカル「Living Room MUSICAL」、自身のライブなどでも精力的に活動。

○出演情報
HIRO YUUMI 25th ANNIVERSARY Special Talk&Sing『COLLECTION!』
悠未ひろ 25thアニバーサリー コンサート
【日時&ゲスト】11月3日(木・祝)午後5時30分 ゲスト:小柳ゆき(歌手)、4日(金)午後7時 ゲスト:伶美うらら(95期、元宙組娘役)、5日(土)午後1時30分 ゲスト:七帆ひかる(85期、元宙組男役)/午後5時30分 ゲスト:十輝いりす(85期、元宙組&星組男役)、6日(日)午後1時30分 ゲスト:すみれ乃麗(92期、元宙組娘役)/午後5時30分 ゲスト:なし(FC会員限定公演)
【伴奏】向江陽子(pf.)
【会場】霞町音楽堂(東京都港区)
【金額】9500円(全席指定、日替わりビジュアルプログラム・お土産付き)
【一般発売】10月7日午前10時(カンフィティ独占発売

(Hint-Pot編集部・瀬谷 宏)

(インタビュアー:竹山 マユミ)

竹山 マユミ(たけやま・まゆみ)

明治大学卒業。広島テレビ放送のアナウンサーを経てフリーアナ、DJとして各テレビ局やラジオ局で番組を担当。コーピングインスティテュート コーピング認定コーチ。宝塚歌劇団は生まれる前から観劇するほどの大ファン。