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盲導犬候補の子犬を預かるボランティア一家 まもなく訪れる別れへ“卒業”準備

公開日:  /  更新日:

著者:和栗 恵

お出かけ先でのジェニー、古澤さん(左)と次女の叶海ちゃん【写真提供:日本盲導犬協会】
お出かけ先でのジェニー、古澤さん(左)と次女の叶海ちゃん【写真提供:日本盲導犬協会】

 今年1月から、盲導犬候補のパピー(子犬)を預かるボランティア「パピーウォーカー」に挑戦している関東在住の古澤さん一家。日本盲導犬協会の日本盲導犬総合センター「盲導犬の里 富士ハーネス」から委託されたパピーの「ジェニー」と、生後2か月から1歳頃までの10か月間をともに過ごしています。そんな生活がいよいよ終わりに近づき、ジェニーは目覚ましく成長。今回はその夏の終わりに起こった出来事について、古澤さん一家のママ・真由美さんに振り返っていただきました。

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「盲導犬」に対する見方が変わった古澤さん

 先日、日本盲導犬協会で働いている押野まゆさんにお話を伺う機会がありました。押野さんは、先天性緑内障で20歳の時に全盲になり、先輩盲導犬の「バロン」(ラブラドールレトリーバー)とともに暮らしています。

 実はパピーウォーカーを始めるまで、盲導犬が何をしているのか、どんな訓練をするのか、何も分からなかった私は、心のどこかで「盲導犬は人間から仕事を押し付けられていてかわいそう」という気持ちを抱いていました。

 ジェニーと暮らし始めてそうした気持ちは少しずつ薄れていきましたが、今回、押野さんのお話を聞いてそうした思いが解消されました。

 押野さんの1日は、すべて盲導犬ファースト。起きたらすぐにバロンのボディチェックを行い、ブラッシングをし、お水とごはんをあげて……バロンのことがすべて終わるまで、押野さん自身のことは後回しなのだそうです。

 出勤の際もバロンのことを第一に考え、暑い日はタクシーに乗って行くこともあるのだとか。盲導犬をパートナーにする人たちが思っていた以上に盲導犬ファーストだったことに驚くとともに、犬たちが本当に大事にされていることが分かったのです。

 押野さんが名前を呼ぶと、うれしそうにシッポを振りながら寄り添うバロン。その姿に、思わず涙がこぼれそうになりました。

「大切なパートナーとして扱われているんだな。家族として、友人として、大事にされているんだな」

 そう思うと、盲導犬に対して抱いていた不安が、すべて解けていきました。

 盲導犬は、目の見えない、見えにくい方に、道にある段差や曲がり角などを教えながら歩行のサポートをするのがお仕事です。盲導犬は何時間も外を歩いているわけではなく、押野さんによると、バロンは自宅から職場まで一緒に歩くことがお仕事のほとんどで、1日1.5~2時間程度とのこと。出勤後のバロンは職場でまったり寝ていたり、おうちでゴロゴロしていたりと、自由時間を好きに楽しんでいるそうで、その様子は以前別の協会の方にお聞きした通りでした。

 私たち家族が一緒に暮らしているジェニーも、こうしていつか誰かを助け、愛され、相棒として欠かせない存在になってくれるのを願っています。