カルチャー
三遊亭円楽さん 「命を削るほど尽力していた」 「笑点」の制作スタッフが語る知られざる素顔
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落語界発展を願いイベントをプロデュース 「命を削らなくても…」
――「笑点」で“腹黒男”のキャラクターだった円楽さんですが、実際のお人柄は?
円楽さんは、僕ら後輩への面倒見がすごく良いんですよ。「笑点」の収録が終わると、若手の落語家も誘ってよく食事に行っていました。彼はお酒が好きだけど、飲み方がすごくきれいでね。人に迷惑をかけたことなんて一切ない。とにかく、“楽しくて粋なお酒の飲み方”をする人でしたよ。
また、お酒の席ではいつも座持ちの中心でした。例えば、地方局での収録で懇親会が開かれると、二次会は円楽さんが仕切ってくれましたね。ホテルへ帰るタクシーを呼んだ時でも、若手に「もうちょっと飲みたいのか?」ってお金を渡す気っ風の良さがありました。自分の弟子だけでなく、後輩やスタッフ全員にもそういう気配りを見せる姿をよく覚えています。
――円楽さんは「博多・天神落語まつり」や「さっぽろ落語まつり」といったイベント開催にも尽力されました。
落語界というのは、関東だけでも2つの大きな協会に加えその他の一門もあります。なので、そうした垣根を超えて同じ寄席の定席に噺家が一堂に会するということは、まずあり得ない。それを「笑点」メンバーだけでなく関西の噺家も出演し、地方で有名な落語家の話を聴けるイベントとして実現できたのは、まさに円楽さんの人望によるものです。「落語界を発展させるためにイベントに来てくれ」と純粋な気持ちで出演者を集めたわけで、円楽さんじゃないとできなかったと思います。
加えて、イベントを開催するにはスポンサーや協賛企業からのバックアップ、メディアの情報発信も必要です。そういうことも円楽さんが1人でこなしていたわけです。今振り返ると、こうした落語界発展への尽力が命を縮めてしまったんじゃないかと思いますよね。
――落語界の発展に、まさに命をかけていたと?
もし過去に戻って円楽さんに何か言えるのならば、「そんなところで命を削らなくてもいいんじゃないか」と言葉をかけたくなるのかもしれませんが、やはり僕の口からは何もないです。自分の好きなこと、やるべきことをやり尽くされたのだから。
そうそうたるメンバーが出演する落語のイベントをプロデュースしただけでも、偉大な功績なのは間違いありません。「笑点」では「友達がいない」「スマートフォンを買ったのに電話が1回もかかってこない」なんて冗談を言っていましたけど、それは“演出”。本当は落語界にとてつもなく大きな貢献をした人物です。
――イベントのプロデュースは生き甲斐だったんですね。
「博多・天神落語まつり」で一つ思い出深いエピソードがありますね。イベントは例年11月に開催されるのですが、9年前に僕の還暦祝いのゴルフコンペと重なったことがありました。円楽さんにも招待状を出しましたが、「ごめん。(コンペの日が)イベント初日だから行けない」って来られなくて。代わりにお祝いを贈ってくれましたね。何よりもイベントを優先していましたよ。