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仕事・人生

男性優位だった飲食業界に風穴 ヨーロッパ500都市で食文化を実体験した女性

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 直子

「さいたま榎本農園」の榎本房枝さん【写真提供:榎本房枝】
「さいたま榎本農園」の榎本房枝さん【写真提供:榎本房枝】

 近年、日本では健康や食に対する意識が高まっています。「安全でおいしいものを食べたい」という消費者の声に応えるべく、地元農家が育てた旬の農産物を販売する大手スーパーマーケットも増加中です。農林水産省の調査によると、40代以下の新規就農者数はここ10年ほど毎年2万人前後で推移するなど、農家は注目の職業になっています。さまざまな分野で活躍する女性たちにスポットを当て、その人生を紐解く連載「私のビハインドストーリー」。今回登場していただくのは、ホテルやレストランで20年以上にわたり料理人・サービススタッフとしてキャリアを積んだ後、弟と実家のトマト農園を継いだ「さいたま榎本農園」の榎本房枝さんです。前編は、男性優位だった飲食業界での奮闘記についてお話を伺いました。

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小学生の頃から料理をスタート 採れたて野菜で妹弟の空腹満たす

 埼玉県さいたま市に広がる約1ヘクタールの土地で、ミニトマトなど計100種類もの野菜を有機肥料と無農薬で栽培している「さいたま榎本農園」。榎本さんは2013年、弟の健司さんとともにこの家業を継ぎました。現在は農林水産省「農業女子プロジェクト」のメンバーとして、農業の普及や食に関する情報発信に努めていますが、幼い頃は「農家には嫁に行かない! と思っていました」と笑います。

「小さい頃から畑が遊び場。両親が会社勤めのご家族はお出かけしても、うちはどこにも連れて行ってもらえず『こんな生活は嫌だ!』って(笑)。でも、季節によって変わる草花や旬の野菜が身近にあったので、食には自然と興味が湧きました」

 4人姉弟の長女。小学校低学年でホットプレートを買ってもらい、忙しい両親に代わり、お腹を空かせた妹弟のために料理を始めたという“頼れるお姉さん”でした。

「子どもにとって空腹は死活問題(笑)。高学年になると、畑から野菜を採ってきて『野菜炒めを作って食べちゃおう!』なんてやっていました」

 食への興味は尽きることなく、高校は食品科で食品加工や微生物について勉強。「ブドウ酵母があるなら」と、野菜から起こした天然酵母でのパン作りを研究し、自宅で採れたさまざまな野菜を使ってシャーレの上で酵母を培養しました。「長芋は相当ひどかった」など失敗もありましたが、「果物と違って野菜は単体ではなく、何種類かミックスすると良い酵母ができましたね」といった発見もあったそうです。