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仕事・人生

農業における女性の地位は「一気に変わってきた」 畑と飲食店をつなぐ女性の奮闘物語

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 直子

「さいたま榎本農園」の榎本房枝さん【写真提供:榎本房枝】
「さいたま榎本農園」の榎本房枝さん【写真提供:榎本房枝】

 ホテルやレストランで20年以上にわたり料理人やサービススタッフとしてのキャリアを積んだ後、実家のトマト農園を継いだ榎本房枝さん。弟の健司さんと運営する「さいたま榎本農園」では、30種類のミニトマトなど計100種類以上の野菜を栽培しています。安全でおいしい野菜を百貨店やレストランに卸している他、通販でも消費者に提供。また、農林水産省「農業女子プロジェクト」のメンバーとしても活躍中です。さまざまな分野で活躍する女性たちにスポットライトを当て、その人生を紐解く連載「私のビハインドストーリー」。今回の後編では、就農後の奮闘と農業への思いについてお話を伺いました。

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料理人時代に受けた衝撃「これでは野菜嫌いが増えるに決まっている」

 農家に生まれ育ち、野菜や食がいつも身近にあったという榎本さん。ホテルやレストランでパン・菓子職人として10年働いた後、男性優位だった料理人の世界で発言権を得るために、ヨーロッパで“本物”を体験する旅に出発しました。約1年をかけて20か国500都市を訪問し、現地の食文化を自分の目で見ながら舌で味わい、体験したそうです。

 ホテルやレストランの厨房で働いていたのは、まだ野菜は肉や魚といったメイン料理の添え物と見られがちだった1990年代。幼い頃から採れたての新鮮な野菜のおいしさに触れていた榎本さんは、厨房での野菜の扱われ方に愕然としたことがありました。

「普段はパンやお菓子の厨房にいましたが、週末に結婚式やディナーショーなどがある時は、大きな宴会場のバックヤードで他の厨房の方と一緒にコースを提供します。そこでまかないとして余った料理を食べる機会もありました。

 でも、だいたい付け合わせの野菜はグチャグチャに煮込んであったり、素材の味がまったく感じられないものになっていたり。『これでは野菜嫌いが増えるに決まってるじゃない』という味でした(苦笑)。当時はまだ、野菜は単なる飾りで、味は二の次。今は料理人の皆さんが野菜を大切に考えてくださいますが、あの当時は衝撃を受けましたね」

ホテル勤務時代の榎本さん【写真提供:榎本房枝】
ホテル勤務時代の榎本さん【写真提供:榎本房枝】

 そんな経験もあり、ヨーロッパから帰国後は、自ら学んだ野菜の魅力やおいしい食べ方をより多くの人に伝えようと、料理人からサービススタッフに転身。ヨーロッパで得た経験や知識が高く評価され、男性優位の世界でリーダー格を任されるまでになりました。

 野菜ソムリエの資格も取得し、講師としても活躍。野菜に関する知見をもっと深めたいと思った時、たどり着いたのが「もっと野菜を知るためには、農業を勉強した方がいい」という考えです。父親の体調が優れなかったことも手伝い、実家に戻って農業をサポート。2013年に弟とともに家業の「さいたま榎本農園」を継ぎました。