仕事・人生
農業における女性の地位は「一気に変わってきた」 畑と飲食店をつなぐ女性の奮闘物語
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農家で一番大変なことは…「販路の確保かもしれません」
近年は社会の価値観が多様化し、食を含めたライフスタイルを見直す人が増えています。そんな中で、かつてはきつい仕事と敬遠されていた農業を始める若い世代の人たちも少なくありません。新規就農者に刺激を受け、さまざまな工夫をする農家も増えてきたそうです。
「飲食店を中心に販路を広げている農家さんは、ものすごく勉強しています。フランスの料理雑誌を見て料理界の流行を学んだり、付け合わせにどんな野菜が使われているのかチェックしたりして、『じゃあ、こういう野菜を作ろう』とする方も多い。生き残るにはそういう勉強も必要ですよね」
新規就農者は大歓迎ですが、中には準備が不十分なまま始めてしまうケースも。榎本さんは「まずは販路を確保することが大切。どこをターゲットにするかで、作る野菜も変わってきますから」とアドバイスを送ります。
「畑に種をまいて、野菜が出来上がっても、買ってくれる人がいなければ成り立ちません。『作ればどうにかなる』と思っている人が意外と多くて、相談を受けることもあります。農業で一番難しいのは、販路の確保かもしれません。
すぐにスーパーマーケットとは取引できないし、直売所に置いてもらえないこともある。インターネット販売も顧客がつくまでは時間がかかります。私も苦労したので分かりますが、売るのは本当に大変(笑)。まず販路の目処を立ててからスタートすることをおすすめしますね」
榎本さんは農林水産省が進める「農業女子プロジェクト」のメンバーとして、男性優位の農業界でも女性が働きやすい環境作りを目指しています。国の強力なバックアップを得た影響もあり、プロジェクトが始まった2013年当時に比べると、農業における女性の地位は「一気に変わってきた」と思うことも。
「同時に、農業のイメージも変わってきたと感じます。「『楽しくやろう』『おしゃれにやろう』という方向に進むと同時に、『野菜ってかわいいんだよ』という表現をしようとしているのを感じますね」
そう語りながら笑顔を浮かべる榎本さん。自身の経験を生かしながら、今後も農業と飲食業界をつなぐ役目を果たしたいと考えているそうです。野菜のおいしさを伝えながら、今後も日本の食文化の発展に貢献します。
埼玉県生まれ。農家に生まれ育ち、高校では食品科で発酵について研究。製菓専門学校卒業後はホテルやレストランでパン・菓子職人として約10年勤務。料理人として経験を積むためにヨーロッパを旅し、約1年で20か国500都市を訪問。現地の食文化に触れる。帰国後はリゾートホテルのサービススタッフとして勤務。野菜ソムリエの資格取得後、2013年に弟とともに家業を継ぎ、現在は「さいたま榎本農園」としてミニトマトを中心に100種類以上の野菜を栽培する。農林水産省「農業女子プロジェクト」のメンバーとしても活躍中。
(Hint-Pot編集部・佐藤 直子)