仕事・人生
農業における女性の地位は「一気に変わってきた」 畑と飲食店をつなぐ女性の奮闘物語
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元料理人のキャリアを生かした双方向のコミュニケーション
家業を継いだものの、先代の父親と一緒に活動する期間が短かったため、継続している農家とはみなされず、継いだ時点で1年目の新規就農者になってしまいました。父親の取引先との契約も白紙。ミニトマトを中心とする野菜を栽培しても売る先がなく、まずは取引先や販路の開拓からスタートしました。ここで生きたのが、ホテルやレストランで働いた経験です。
「私の強みは飲食店との関係性だと思ったので、『野菜を作っているから必要だったらぜひ』と知り合いのシェフ全員に声をかけました。そしてやるからにはトップブランドになりたかったので、百貨店の野菜売り場に卸したいといろいろな野菜関係者に声をかけて、何とか百貨店のバイヤーにたどり着いたり……。ホテル時代、自分が目指すターゲットを定めたら実現のために周囲に発信し続けることを学んだので、就農した後も『紹介してください』と、とにかく頭を下げました」
地道な努力が実を結び、今では関東圏を中心に数多くの百貨店やレストランに野菜を出荷しています。さらに、新鮮な野菜を届けるという一方通行な取引ではなく、料理人・野菜ソムリエという経験を生かし、双方向のコミュニケーションが図れる農家として大きな信頼を集めるようになりました。
「レストランから野菜のオーダーを受ける時、私は必ずどんな料理に使うのかを聞いています。野菜には旬があるので、季節によっては用意できないものもありますが、そういう時には代用できる野菜を提案します。それ以外でも『その料理だったら、このサイズですね』『今のシーズンはこっちの野菜の方が合うと思いますよ』といった会話もできる。これは私の強みだと思っています」
評判が評判を呼び、時には遠く離れた関西や九州からもオーダーが届くそうです。しかしそうした時は、うれしい気持ちをグッとこらえ、こう伝えているのだとか。
「地産地消のように、近くの農家がより新鮮な野菜を提供するのが一番だと思っています。最近は新規就農者も増えているので、必ず地元で頑張る人がいると思うんですね。新鮮な野菜を安心安全に、一番良い状態で食べていただくために、地元で見つけていただきたいとお願いしています」