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仕事・人生

実録・夫の親の面倒だれがみる? 晩婚の長男妻が直面した“夫婦崩壊”の危機

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

義母の急病で生活が一変 週末は義実家通いの日々に

 平穏な日々が崩れ去ったのは突然のことでした。義母が家の中で倒れ、救急搬送されたのです。原因は脳出血。搬送が早かったため大事には至らなかったのですが、利き手の右手に後遺症が残ってしまいました。

 まず、問題となったのが、義母が入院中の義父の身の回りの世話です。昔気質の義父は、何ひとつ自分で家事をすることはできず、かろうじて近くのスーパーに総菜を買いに行けるレベル。その時は、専業主婦の弟嫁が平日に2回顔を出し、週末は由美さん夫婦が泊まって、家事をすることで事なきを得ました。

 問題は、義母が退院してきてからでした。比較的軽いマヒだったとはいえ、まだまだその症状に慣れていない義母。自分の身の回りの世話すら人任せの義父は、頼りにはなりません。またリハビリのために通院をしなければならず、不自由な体ではひとりで病院に行くこともままならなかったそうです。

 それでもどうにか今まで通りふたり暮らしを続けてもらおうとしていた矢先、事件が起きました。義母がトイレに間に合わず、家の中で粗相をしてしまったのです。入院で体力が落ちていた義母は、服を着替え、風呂に入り、掃除をするという一連の作業を行うことができず、義父が弟嫁に助けを求めて電話をしたのですが繋がらず。結局、仕事中の由美さん夫婦にヘルプの連絡が来ました。

「あの日を境に潮目が変わりましたね。義両親から泣きながら電話が来て、夫の気持ちが同居に大きく傾いてしまったようなんです。この一件で、義両親もふたりで暮らしていく自信がなくなってしまったそうなんです」

「次男の嫁ですし」 介護を拒否する義弟夫婦

 由美さん夫婦は義実家に駆けつけたその足で義弟夫婦の元へ寄り、話し合いが開かれました。由美さんは、健康な義父を徐々に自立させ、散々世話になってきた弟夫婦が中心となって義母の面倒をみていくべきだと考えていました。もちろん由美さん夫婦も週末など、できる範囲で手を貸すつもりだったといいます。しかし、弟嫁が頑としてその提案を承諾しなかったそうです。

「弟嫁の言い分は、子どもが大学受験のため、塾の送り迎えなど徹底してサポートしてあげたいから、今よりも義実家に行く頻度を減らしたいということでした。そして、私達が賃貸の家に暮らしていること、長男であることなどを挙げ、『お義兄さん夫婦が同居すべきだ』と言い出しました。しかも『私は次男の嫁ですし』とも言ってしましたね。今までそういうことを口にしてきたことがなかったので、私にとって義弟嫁がそう思っていたこと自体、衝撃的でした」

 今さら「長男の嫁」とか「次男の嫁」って……モヤモヤとした思いを由美さんは抑えつつ冷静に対応するも、その日の話し合いは平行線のまま。しかし、決まらないからと言って義両親を放置することはできないため、その日は夫の健一さんが義実家に泊まり、由美さんは自宅に帰ることになりました。

 その後は、なし崩し的に健一さんが実家に泊まり込み、仕事を調整しつつ義両親の面倒をみることに。由美さんは、週末になると義実家へ行き、家事をこなすなど休まらない日々が続いたそうです。

実家に泊まり込む夫から涙の電話「仕事を辞めてこっちに来て欲しい」

 そんな生活を始めて2か月が経ったある夜、健一さんから電話がかかってきました。

「夫に泣きながら『仕事を辞めてこっちに来てほしい』って言われたんです。はあ? という感じでした。なんで弟夫婦には任せずにひとりで背負い込んでるの!? とか、私が仕事を辞めたら、私達自身の老後の資金はどうするの!? とか。そもそも私は仕事を辞めたくないのに、なぜ夫は私の気持ちを考えてくれないのか、仕事を続けるには離婚するしかないのか、とか。一瞬で色々なことが頭をぐるぐるしました」

 とりあえず、泣いている夫になにを言っても無駄と判断した由美さんは、ぶちまけたい言葉をぐっと抑えて「考えておく」とだけ言って電話を切り、すぐに義弟夫婦の家に電話をかけました。すると、義弟夫婦の下の娘が電話に出たそうです。

「義弟夫婦はあいにく留守で、とりあえず下の子に現状を伝えました。子どもに言う話ではないと思ったのですが、その時の私には、心の余裕がなかったんだと思います。正直、泣きながら電話してきた夫も、それを受けた私も崩壊寸前だったのかもしれません」

 電話を切った後、少し冷静になってみて「言うべきじゃなかった」と後悔したという由美さん。しかし、この一本の電話がきっかけで事態は大きく変わることに。