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二宮和也主演『ラーゲリより愛を込めて』 妻役の北川景子に胸が揺さぶられる理由とは

公開日:  /  更新日:

著者:関口 裕子

(c)2022映画『ラーゲリより愛を込めて』製作委員会 (c)1989 清水香子
(c)2022映画『ラーゲリより愛を込めて』製作委員会 (c)1989 清水香子

 2003年にデビューした北川景子さん。多数の人気ドラマや映画に主演する一方、2016年にミュージシャンのDAIGOさんとの結婚を発表しました。2020年9月に第一子女児の出産を報告した後も第一線で輝き続け、来年度のNHK大河ドラマ「どうする家康」ではお市の方を演じます。そんな北川さんの2022年を締めくくる映画は、二宮和也さんの妻役を演じた『ラーゲリより愛を込めて』。登場シーンは少ないものの、鑑賞者をはっとさせる演技で作品に深みを与えているそうです。映画ジャーナリストの関口裕子さんに解説していただきました。

 ◇ ◇ ◇

劣悪な環境の強制収容所 希望を失わなかった兵士たちを描く実話

「女性は家を守り、男性は外で仕事をする」。これをテーマにした議論が今日もたくさんSNSのタイムラインをにぎわせているが、男女共同参画の観点からも、現在はどちらも平等に行うべきという考え方が一般的だ。

 そもそも“女性は家、男性は仕事”などとまことしやかに言われるようになったのは、第三次産業従事者が増えた高度経済成長の後半だった。日本の就業者の半数が第一次産業に従事していたその前の時代は、家族全員で家業である“仕事”を手伝っていたからだ。家庭内事業ゆえ無給だったかもしれず、今日的にはそれはそれで別な不平等を抱えていたのだと思う。

 それらはジェンダーや人権などの観点から議論され、少しずつ改善されてきたわけだが、残念ながら俎上にすら載せることができない時代もあった。戦時中だ。でも生きていくためには誰かが働かなくてはならない。瀬々敬久監督、二宮和也主演の『ラーゲリより愛を込めて』で、北川景子が演じた女性もそんな1人だった。

 映画は、劣悪な環境にあるシベリアの強制収容所(ラーゲリ)に長きにわたり拘留されながらも、生きて帰る希望を失わなかった兵士たちを描く実話だ。主人公は、身に覚えのないスパイ容疑でシベリアに抑留された山本幡男(二宮)。北川はその妻モジミを演じる。

ソ連軍にとらえられ収容所へ…二宮の説得力ある見事な演技

 終戦直前の1945年8月9日、山本は当時侵攻を開始したソビエト連邦(ソ連)軍に満洲国(満州)でとらえられる。その後、ソ連国内へと移送されると、仕事であった特務機関文諜班でのロシア語の翻訳・通訳が国内法に触れるとして、一方的な裁判で有罪判決。冬は零下40度を超える収容所に収容された。

 満洲国の首都・新京に住んでいたモジミが最後に山本に会ったのは、出征後の1945年6月のハルビンだった。その後、敗戦を迎え、とらわれた夫はどこにいるのか分からなくなる。ただロシア語が堪能で、とらえられた先でも通訳をしていると聞いていたので、ひどいことにはなるまいと思っていた。まさかシベリアに抑留されてしまうとは、思いもよらなかったのだ。

 とらえられた山本たちは、収容所で人としての尊厳を奪う規則や食料不足、そして厳しい労働や寒さに耐えながら暮らしていた。病気や怪我をする者、それが元で亡くなる者、自死する者も多数。60万人以上の日本兵が抑留され、そのうち6万人以上が現地で亡くなったという。

 そんな収容所で山本が行ったのは、勉強会や句会。集会をする権利、紙に書く権利さえはく奪しようとするソ連側に毅然と立ち向かい、人々の思考力を刺激し、何かを生み出す気力を醸成しようとした。それを演じる二宮の、押されれば引き、相手が引いていけば当然の権利と行動範囲を広げる柔軟な山本像の構築の仕方は、説得力があり、見事だった。

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