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二宮和也主演『ラーゲリより愛を込めて』 妻役の北川景子に胸が揺さぶられる理由とは

公開日:  /  更新日:

著者:関口 裕子

「素なのではないか」とも感じる秀逸なシーンも

 この映画にはもう1つ、タイトルにあるように〈愛を込めて〉の部分がある。戦時中を舞台にしたヒューマンドラマだが、実は壮大なラブストーリーでもある。

(c)2022映画『ラーゲリより愛を込めて』製作委員会 (c)1989 清水香子
(c)2022映画『ラーゲリより愛を込めて』製作委員会 (c)1989 清水香子

 ネタバレにならないように少しだけ書くと、山本の書いたその“ラブレター”のタイトルは「妻よ!」。その冒頭には、長年の夫婦でもなかなか贈られることのない素敵な言葉が記されている。

 これを読んだモジミのリアクションが本当に秀逸。彼女の言葉の発し方が胸を揺さぶる。北川はこの時どんな感情だったのか。一瞬、素なのではないかとも感じる忘れられないシーンになっている。

 モジミの人生、そして北川の仕事ぶりをみていると、人生を自身で選択できる権利、仕事をすることも、しないことも選べる権利、個人が尊重され、どんな人も幸せに生きる権利を手放すことのない現代をとても幸せに思う。同時に、これは何があろうと手放してはいけないものなのだと心から思う。

『ラーゲリより愛を込めて』全国東宝系にて公開中 配給:東宝 (c)2022映画『ラーゲリより愛を込めて』製作委員会 (c)1989 清水香子

(関口 裕子)

関口 裕子(せきぐち・ゆうこ)

映画ジャーナリスト。「キネマ旬報」取締役編集長、米エンターテインメントビジネス紙「VARIETY」の日本版「バラエティ・ジャパン」編集長などを歴任。現在はフリーランス。