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日本の育休制度は世界一 男性取得率が上がらない理由は

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

希望しない男性は収入や出世を不安視する傾向に

「とても希望しない」「どちらかというと希望しない」を選択しなかった男性60.7%、女性72.1%を除く【画像:Hint-Pot編集部】
「とても希望しない」「どちらかというと希望しない」を選択しなかった男性60.7%、女性72.1%を除く【画像:Hint-Pot編集部】

 では、希望しない人たちにはどのような理由があるのでしょうか。この設問で男女ともに最も多い回答は「収入が減るのが不安」でした。しかし詳しく見ていくと、男女で傾向に差があることに気がつきます。

 男性で2番目に多いのが「今後の昇進など夫側の会社内での待遇に影響が出ないかが不安」の13.9%。一方、女性で2番目に多いのは「夫が休んでも家事育児の負担は減らないと思う」で11.8%でした。これは6つの選択肢の中で、男性よりも女性の回答者が唯一多かった選択肢でもあります。

「男性はやはり、勤め先で育休を寛容に受け止めてもらえるかどうか、賃金や出世に響くのではないかを心配する度合いが強いようです。これに対して女性は、家で男性が本当にちゃんとやってくれるのかを心配する傾向があります。女性は家のこと、男性は職場のことをそれぞれ心配する傾向が強いということでしょう」(筒井さん)

男女賃金格差の圧縮や男性の積極的な家庭参画など課題は山積

 先述した通り、今回の改正は育児休業を取得しやすい環境作りのため、取得者本人以外にもアプローチする内容が含まれます。そして、より取得しやすい新制度も組み込まれました。しかし、変化を実感するには時期尚早のようです。

「直近の法改正で、育休取得の意向確認あるいは説明が義務付けられました。取得のしやすさに若干はプラスへ働く可能性があります。ただ、このアンケート調査からも見えてきますが、抜本的な促進のためには男女賃金格差の圧縮、育休取得がキャリアに響きにくい働き方の構築、男性の積極的な家庭参画が課題になります」

「日本の育休制度は、ユニセフの2021年制度評価で1位を獲得するなど、制度だけ見た時には他国と比べてもかなり充実しています。問題は、代替労働力を確保しにくいなどの理由で企業側が労働者の休業取得に前向きになりにくいこと、男女賃金格差があるために男性よりも女性に取得が偏ってしまうこと、日本の男性が家のことをするのが苦手なことなど、制度以外のところにあります。この問題は、『ここを変えればすべてが分かる』ようなものではありません。働き方(職場でも家でも)をトータルに見直すことが必要です」(筒井さん)

◇筒井淳也(つつい・じゅんや)
立命館大学産業社会学部・教授。福岡県出身。計量社会学・家族社会学が専門。結婚、女性労働、ワーク・ライフ・バランスといったテーマに取り組んでいる。著書に「仕事と家族」(中公新書)、「結婚と家族のこれから」(光文社新書)などがある。

(Hint-Pot編集部)