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盲導犬候補の子犬がついに旅立ち 約10か月を見守ったボランティア一家の奮闘記
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盲導犬候補のパピー(子犬)を預かり、家族として約10か月間をともに暮らすボランティア「パピーウォーカー」。Hint-Pot編集部では、今年1月からこのボランティアに挑戦した古澤さん一家の日常を追ってきました。そしていよいよ、パピーとお別れする日が。本格的な訓練に入るため、パピーウォーカーのもとを離れ、日本盲導犬協会の日本盲導犬総合センター「盲導犬の里 富士ハーネス」に向かうパピーと、その姿を見送る家族……12月初旬に「富士ハーネス」で行われた修了式の様子をお届けします。
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きょうだい犬6頭とその家族が勢ぞろいした会場
穏やかな日差しに恵まれ、美しい富士山が姿を見せた朝。「富士ハーネス」を訪れたのは、Hint-Pot編集部が取材を続けた古澤さん一家&パピーの「ジェニー」と、同様にパピーを預かり育てた5組のご家族です。
この日に修了式を迎える6頭は、ラブラドールレトリーバーの父犬「ルバーブ」と母犬「サラ」を両親に持つ子犬たち。8頭いるきょうだいのうち6頭が、ここ「富士ハーネス」からそれぞれのパピーウォーカーに委託され、健康に育ちました。
修了式の始まりは、センター長の佐野さんによるボランティアへのお礼の言葉から。佐野さんは、「人間との信頼関係を形成する多感なパピーの時期を優しい家族と過ごすことで、盲導犬としての資質を育てる」という目的を改めて解説しました。そうしたお話を聞いている間、犬たちはそれぞれの家族の足元でくつろいだ姿を見せ、10か月間で築かれた「信頼」をうかがわせてくれます。
その後は、これからどのような訓練を行うのか、また今後パピーと会うことはできるのかといった疑問への回答とともに、ボランティアの家族を支えてきた訓練士からお礼の言葉が。それぞれのパピーと家族への思い出も語られました。
ちなみに、今後の訓練内容は主に2つ。視覚障害者の歩行を安全にサポートできることを目指す歩行訓練と、指定の言葉「ワンツー」と言うと排泄ができるようにすることです。決して厳しく「しつける」のではなく、遊びを通してその犬の長所を伸ばし、毎日コツコツと楽しい作業を通して、盲導犬として大切なことを覚えていくそうです。訓練の時間や日数、ごはんなど、カリキュラムはすべて犬それぞれの個性に合わせて組まれるというから驚きですね。
ただし、盲導犬になれるのは盲導犬の候補として生まれた全パピーの30~40%程度。今日集まった6頭をこの確率でみると、うち2頭が盲導犬になれるかなれないか……という数なのだとか。
目の見えない、見えにくい方の命にもかかわる仕事に就くため狭き門。とはいえ、愛情たっぷりに育てられたパピーたちは、たとえ盲導犬にならなくても、介助犬やセラピードッグなど個性に合った道へキャリアチェンジします。また、一般家庭で育てられるパピーもいるそうです。
そしてもう1つ気になる点といえば、「パピーウォーカーを終えた家族は、将来パピーに会うことができるのか?」。こちらも丁寧な説明があり、ある程度の訓練を終えてから、再会することができるとのこと。さらに成長を遂げた犬の姿を見ることができ、盲導犬育成事業へのつながりを実感する機会となるようです。