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ライフスタイル

自分の思い次第で里山カフェに 米在住ナチュラリストの家と暮らしへのこだわり

公開日:  /  更新日:

著者:小田島 勢子

自然やお気に入りのものに囲まれた暮らし

 ティンクチャー作りには、ウォッカを使っています。虫刺されにビワの葉とアロエ、ストレスや今日はお酒を飲むぞ! という集まりの時はマリアアザミ、風邪をひきそうな季節にはエキネシアの根など。それぞれウォッカに漬けて常備しています。

 また料理に使うこともあります。ハワイの友人から贈られたバニラビーンズはウォッカ漬けにして「バニラエクストラクト」に。こちらはパンケーキを焼く際など、香り付けに使っています。

 天井には、友人からもらったローリエの枝や、旅先の路肩の売店で買ったニンニク、庭のヨモギやオリーブの葉、ビワの葉を洗って吊るしています。乾燥を兼ねて、ハーブやスパイスの保存場所に。必要な時にそこからもぎ取って使い、普段飲むお茶も、飲みたい時の気分やその時の症状に合わせてブレンド茶にします。

 古いティーカップや、陶芸作家の友人が焼いたお茶碗など、お気に入りの道具はキッチンの窓辺に作った棚に置いています。収納場所でもあり、好きなものをいつでも眺めることができる大好きな空間でもあります。

 小さな家は、保存や冷蔵スペースが限られています。そこで必然的に、自分のできる範囲で実用的に好きな空間を作っていった結果、物の配置も、暮らし方も現在のスタイルになりました。

「里山のカフェだ」 思い次第で生み出せること

 ある日、改めて自分の空間を眺めていると「これが私の里山カフェだ」と感じた瞬間がありました。

 多くの人が、自分が求める理想を心に描いて生きていると思います。もちろん実現している人もいるでしょう。けれど、多くの人は仕事や学校などの家庭環境や、かかる費用など現実的に優先するものがあり、今を選択しています。

 ロサンゼルスの住宅街で里山カフェ? 人によって答えや感覚はさまざまですが、私は今、この空間を若い頃に憧れた「日本の里山のカフェ」だと思い暮らしています。

 もちろん、実際はカフェでも日本の里山でもありませんが、それでも自分の思い次第で、どんな小さな空間でも、都会でも田舎でも、あなたの今いる空間にすでにあるものやその環境から生み出せるものはたくさんあると思っています。

 例えばワンルームで菜園スペースがないと思っても、キッチンの流しと窓辺があれば、種を発芽させていろいろなスプラウトを育てることができます。立派な家庭菜園だと思うのです。

 ないものを手に入れること以上に、今そこにあるものを大切にすることができたら、今いる自分の環境が新たな視点で見えてくるかもしれません。

(小田島 勢子)

小田島 勢子(おだしま・せいこ)

ナチュラリスト。結婚を機に2004年に南カリフォルニア州へ移住し、3人の女の子を米国で出産。ロサンゼルスの片田舎でバックヤードに鶏たちと豚のスイ、犬のトウフとともに自然に囲まれた生活を送る。母になったことをきっかけに食や環境の大切さを改めて感じ、できることからコツコツと、手作り調味料や発酵食品、スーパーフードやリビングフードを取り入れた食生活をメインに、食べるものは「できるだけ子どもと一緒に作る」「残さない」がモットー。2015年に「RUSTIC」を設立。日本で取得した調理師の知識や経験を生かして食のアドバイザー、ライフスタイルのコーディネーターとして活動。日米プロスポーツ選手やアクション映画俳優の身体作りのアドバイザー、みそ、お酢、漬け物など発酵食品作りの講師、創作料理のケータリングなど幅広い分野で活躍。
https://rusticfarmla.com/