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「ベルばら4強」元宝塚スター安奈淳さんが語る当時 周囲が盛り立てた“のんきな子”

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・瀬谷 宏

インタビュアー:竹山 マユミ

トップスター就任後も支えてくれた上級生と下級生

今も凛とした佇まいが印象的な安奈淳さん【写真:荒川祐史】
今も凛とした佇まいが印象的な安奈淳さん【写真:荒川祐史】

竹山:当時、今はない“ダブルトップスター”という形でしたが、制度だったのですか。

安奈:制度だったかどうかは分かりませんが、星組の時は鳳蘭(50期)さんとダブルでしたね。でも、ダブルといってもあちらはやはり上級生。花組に行った時も、上級生の榛名由梨(49期)さんが月組から組替えでやってきて。ですから、私は頼っていました。頑張ろうというより「お願いします」といった感じで。

竹山:当時の鳳蘭さんはどんな方だったのですか。お写真を拝見すると“男の中の男”という印象を受けます。

安奈:ああ見えて、とても繊細な方です。太陽のようにおおらかな……という感じとはちょっと違います。

竹山:トップスターと2番手、3番手がいる今のスターシステムと、当時は少し違っていますね。

安奈:違いましたね。私も星組から花組へ組替えになりましたけど、組替え後にそこのトップになったという意識はないんですよ。ちょうどその時、甲にしき(46期)さんが花組をお辞めになって、その穴埋めという感じでしたから。

 だから、トップのお披露目といったものがなかったんです。知らない間に、一応主役をやっているからトップになっていた……という感じでした。もう50年ぐらい前になるので今の制度はちょっと分かりませんが、宝塚の舞台を今観ると、何か別物だなと思いますね。

竹山:当時も階段降り(出演者たちがステージの大階段を順に降りてくる演出)はありましたよね。

安奈:ありましたが、大きな羽根を背負って降りることはなかったですね。私があんな何十キロもあるようなものを背負って、もし階段の上から足を踏み外したら……。今の方はすごい重労働だと思います。

 一応トップの時は、衣装にいろいろなものがくっついていたんですよ。でも衣装のデザイン画を見せてもらったりすると、衣装さんに「すみません、これ取ってください」「あれを取ってください」とか言っていました。羽根とかあったら「すみません、これいらないから横の人につけてあげて」って。「あんた変わっとるな、みんなつけてほしい(と)言うのに、あんたは取って(と)言うんか」と言われましたが。

竹山:どうして取ってと言われたのですか。

安奈:何というか、重かったのよね。「両隣の人がつけて、その真ん中に私が立てばつけているように見えるからいいでしょう」と言ったら、呆れられました。ものすごく変わっていましたよね。とにかく、羽根とかそういうのをつけるのが嫌で。

竹山:そうなると、組子(同じ組に所属する人)さんたちは「ますます盛り立てよう!」という感じになりますよね。

安奈:それこそ放っておけなかったらしいです。「ベルサイユのばら」の時、当時は良いカツラがなくて、初めにまず頭の形に合わせて金属の型を作るんです。日本髪の舞妓さんとかと同じですね。それに毛をくっつけて、さらにその毛を巻いてからかぶる。だから一公演終わると、ライトの熱で毛が伸び切っちゃうんですよ。

 でも下級生たちは、公演が終わるとみんなで毛を全部巻いてくれて、次の日のためにちゃんと準備してくれたんです。今は良いカツラがあって、軽い。そういう意味では良い時代ですよね。

竹山:「ベルサイユのばら」といえば、安奈さんのオスカルです。でも実は、最初はアンドレだったそうですね。役変更を直談判されたというお話も……?

安奈:直談判はしていないんですよ。ただ、ちょっと申し上げたことがありまして……。

<次回に続く>

※8日15時10分に記事の一部を修正しました。訂正してお詫びします。

◇安奈淳(あんな・じゅん)
大阪府出身。7月29日生まれ。愛称は「オトミ」「ミキ」。1965年に51期生として宝塚歌劇団に入団し、花組公演「われら花を愛す/エスカイヤ・ガールス」で初舞台。雪組に配属され、1966年に組替えで星組へ。1970年から鳳蘭とともに星組のダブルトップスターとして活躍し、1974年に組替えで花組でもトップスターに。1975年には「ベルサイユのばら」のオスカル役で人気を博す。1978年に「風と共に去りぬ」のスカーレット・オハラ役で退団。退団後は「屋根の上のバイオリン弾き」「サウンド・オブ・ミュージック」「レ・ミゼラブル」などの舞台を中心に活躍し、2012年に第33回松尾芸能賞・優秀賞を受賞。2014年には「宝塚歌劇の殿堂」の最初の100人の1人として殿堂入りした。現在は歌手としてリサイタルやコンサートを中心に活動し、2019年に芸能生活55周年記念コンサート、2021年にオリジナルリサイタル「Bouquet d’espoir」を開催した他、同年に初の自身のビジュアル本「70過ぎたら生き方もファッションもシンプルなほど輝けると知った」(主婦の友社刊)を上梓。2022年は「Anniversary Concert 75th」(銀座ヤマハホール)、「Anniversary Lunch Show」(宝塚ホテル)を開催。

◇出演情報
Arrow Jazz Orchestra ジャズ&宝塚ボーカルフェスティバル Vol.2 With Blues
【日時】2023年1月22日(日)午後3時(終演同5時予定)
【会場】兵庫県立芸術文化センター 大ホール(兵庫県西宮市高松町2-22)
【金額】S席8000円、A席7000円、B席5000円(全席指定)※未就学生をお連れの方はS席2階のみ
【出演】安奈淳・愛音羽麗・悠末ひろ、ゲスト:上田正樹
【演奏】アロージャズオーケストラ
【お問い合わせ】グリークス(06-6966-6555)


三越創業350年記念コンサート 安奈淳 Jun Anna Solo Concert ~MEMORIES~
【日時】2023年3月21日(火・祝)午後4時(開場午後3時30分)
【会場】三越劇場(東京都・日本橋三越本店本館6階)
【金額】S席1万1000円、A席9000円(全席指定)
【演奏】音楽監督・Piano/雄太、Bass/岸徹至、Drums/ミルトン冨田、Synthesizer/藤山正史、Violin/寺島貴恵
【販売】2023年1月8日午前10時開始 三越劇場(0120-03-9354)、チケットぴあ
【お問い合わせ】(株)Office Anna Jun(03-5315-0842、メール:office@anna-jun.com)

(Hint-Pot編集部・瀬谷 宏)

(インタビュアー:竹山 マユミ)

竹山 マユミ(たけやま・まゆみ)

明治大学卒業。広島テレビ放送のアナウンサーを経てフリーアナ、DJとして各テレビ局やラジオ局で番組を担当。コーピングインスティテュート コーピング認定コーチ。宝塚歌劇団は生まれる前から観劇するほどの大ファン。