Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

カキは一度あたるともう食べられない? アレルギーと食中毒の違い 医師が解説

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

あたるともう食べられない…当てはまるのはカキアレルギー

 カキアレルギーは、カキの中に含まれるトロポミオシンというタンパク質に対するアレルギーが原因で起こります。カニなどの甲殻類にも似た種類のトロポミオシンが含まれているため、カキアレルギーのある人は交叉反応で甲殻類にもアレルギーが出ることがあるので注意が必要です。

「カキは一度あたるともう食べられない」「その後もあたりやすくなる」と耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか? これは食中毒ではなく、カキアレルギーが原因の場合に当てはまります。

 アレルギーは遺伝や体質によって起こることが多く、そのような素因は数年あるいは死ぬまで変わることはありません。そのため、カキに対して一度でもアレルギー反応を起こす体になると、その後はいつどの種類のカキを食べても同じ反応が繰り返し起こる可能性があるのです。

 一方で、ノロウイルスや腸炎ビブリオ、貝毒による食中毒は、カキの種類によって病原体や毒素が異なります。そのため、同じカキを食べることを避ければ、再びあたる可能性が低くなるでしょう。

 昨今分かってきているのは、ノロウイルスが人の腸に感染する際、血液型のA型とO型のレセプターを必要とすることです。つまり、A型とO型の人は感染しやすく、B型の人は感染しにくいことになります。ノロウイルスによる食中毒はそう頻繁に起こるわけではありませんが、あたりやすい血液型があるようです。

加熱しても起こるカキアレルギー 貝毒は熱しても毒性変わらず

 カキによく火を通して調理することで、食中毒やアレルギー症状を抑えることはできるのでしょうか?

 カキアレルギーの場合、生カキだけでなくカキフライやカキ鍋など加熱調理をしてもアレルギー症状が出ることがあります。これはカキの中に含まれるトロポミオシンというタンパク質の構造が、熱を加えても一部変性せずに残るためです。

 そのため、カキのエキスを使ったオイスターソースでも、同じ理由でアレルギー反応が起こることがあります。ただし、生ガキでアレルギー症状の出る人が加熱されたカキでは出ないケースもあるので、すべての人が加熱されたカキもオイスターソースも食べられないわけではありません。いずれにしても、カキアレルギーがある人は加熱の有無に関わらず注意をしましょう。

 食中毒の原因となるノロウイルスや腸炎ビブリオは、加熱することでウイルスや菌の活性を食い止めることができます。毒性を失活するためには、ノロウイルスで85度~90度で90秒以上、腸炎ビブリオでは60度で10分以上の加熱が必要です。カキをフライや鍋の具材にする場合は、中心部までしっかりと火を通すことで安心して食べることができます。

 例外として、貝毒は加熱しても毒性が変わらないため、食べている時に異変を感じたらすぐに食べるのをやめましょう。

カキでお腹を壊す人はアレルギーかも 唯一の予防策は摂取しないこと

 カキを食べると毎回お腹を壊してしまうという人は、カキアレルギーがある可能性が高いため注意してください。前述したように、消化器症状の他にのどのかゆみや蕁麻疹、アナフィラキシーが現れる場合は、食中毒ではなくカキアレルギーが疑われます。

 カキアレルギーの有無は血液検査で分かることもあるので、食中毒かアレルギーか判別がつかない場合は医療機関で調べてもらうと良いでしょう。

 アレルギーへの基本的な対処法は、アレルギーの原因物質(アレルゲン)を回避することです。ノロウイルスや腸炎ビブリオによる食中毒の場合は、火を通すなどの予防法もありますが、カキアレルギーはカキを摂らないようにする以外の予防法がありません。

 カキが入っている料理は、カキをメインの食材にしているものがほとんどで、見た目や料理名からカキが入っているかどうか分かることが多々あります。ただし、カキ油やオイスターソースは隠し味として使われることがよくあるため、中華料理をはじめとした炒め物などの料理を注文する際は、事前によく確認をしましょう。

◇土屋裕(つちや・ゆたか)
昭和大学医学部卒。昭和大学藤が丘病院内科呼吸器、埼玉県立循環器・呼吸器病センター呼吸器内科、National Jewish Health, Department of Radiology, Research Scholar、昭和大学江東豊洲病院呼吸器アレルギー内科など国内外で研鑽を積む。医学博士、日本内科学会認定医・総合内科専門医・指導医、日本呼吸器学会専門医・指導医、日本アレルギー学会専門医、日本医師会認定産業医、JMECC(内科救急蘇生)インストラクター、日本救急医学会ICLS(救急蘇生)インストラクター、日本禁煙学会禁煙サポーター、American Thoracic Society member、株式会社IHI(石川島播磨重工)本社・健康支援センター呼吸器部長、たけし在宅クリニック非常勤医師。2020年4月に豊洲はるそらファミリークリニックを開業、院長を務める。同7月、祖父の代から続く医療法人長生会を継承し、医療法人長生会 江東豊洲はるそらクリニックへ名称変更。

(Hint-Pot編集部)