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2022年のドラマで話題をさらった女性俳優たち 2023年の新作おすすめ作品は
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さまざまな話題作が登場した2022年のテレビドラマ。秋から冬は、女性脚本家が手がけた作品も話題になりました。映画ジャーナリストの関口裕子さんが「特にワクワクさせられた」と語るのは、生方美久さんの「silent」(フジテレビ系)と、渡辺あやさんの「エルピス-希望、あるいは災い-」(関西テレビ制作・フジテレビ系)、そして森下佳子さんの「ファーストペンギン」(日本テレビ系)です。そこで今回は、この3本できらりと光っていた女性俳優たちにフォーカス。その理由と2023年に注目すべき出演作品などについて、関口さんに解説していただきました。
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「silent」手話で鑑賞者の感情を揺さぶった夏帆
「silent」(2022年10月6日~12月22日放送)は、後天的に聴覚を失い、親しかった友人たちとの関係を断っていた男性・想(目黒連)が、高校時代の恋人・紬(川口春奈)との再会を機に、現実と向き合いながらも頑なだった心をほどいていくラブストーリー。
本作が初の連続ドラマ脚本となる生方は、主人公である紬と想だけでなく、彼らを取り巻く人々の背景や心情を日常にある言葉で丁寧に描き、社会現象ともいえるほど多くの支持を得た。
このドラマで印象的だったのは、想に思いを寄せるろう者の奈々を演じた夏帆だ。主演の川口春奈ももちろん良いのだが、それ以上に手話で話す夏帆の言葉が、私たちの感情を揺さぶった。
夏帆を最初に知ったのは、山下敦弘監督『天然コケッコー』(2007)。小・中合わせて全校生徒6人の学校へ東京から転校してきた男子(岡田将生)に淡い恋をする、中学2年生のそよちゃんを演じた。そよは小学2年生のさっちゃんのおもらしの面倒を見て、みんなで海に出かける時はスクール水着に短パンとおよそ飾らない。そして雑貨屋さん1軒、床屋さん1軒、郵便局1つの何もない村をこよなく愛している。
そよが作り出していたのは、愛すべき人間関係だ。夏帆はそよとして生きることで、ロケ地の島根にその関係性を醸成してみせた。彼女の構築した世界は観る者を魅了し、何度も見たい、その世界に足を踏み入れたいとさえ思わせた。そして彼女の仕草や表情の一つひとつを我々は愛おしく思った。
16歳の彼女がどこまで意識的に役を作り上げていたか分からないが、確かにそよはそこに生きていた。それから何年経っても、その世界に生きる彼女の能力は変わらない。いや、むしろどんどん自然になっているかもしれない。
『さかなのこ』(2022)で演じたミー坊の幼なじみ・モモコも同様だ。身の寄せどころがなくミー坊を頼るが、自分がミー坊を好ましく思っていること、でもどうにもならないことを理解し、そっと出ていく。モモコのそこはかとなくコケティッシュな風情。その塩梅が素晴らしい。
1月からは話題のタイムリープもののヒューマンコメディドラマ「ブラッシュアップライフ」(2023・日本テレビ系)で、主人公・麻美(安藤サクラ)の親友・夏希を演じる。演技派の俳優をこれでもかと集めたこのドラマも楽しみだ。